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番外編②

第68話『甘くないクッキー』②

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 別の日に、バクスと話をする際にイツキからクッキーを預かって共に食したのだが。

 バクスが、ひと口食べた途端。とんでもないことを口にした。


「これは! 薬効が凄まじいですぞ!?」

「なに?」


 材料を全部聞いたわけではないが、これは趣向は変わっているが普通の菓子では? ブルードベリーのように特別な薬材を使っていないはず。


「恐れ入りますが、チーズの部分でしょう。もしや、イツキちゃんが一から手作りしたことで薬材になったのかもしれませぬ。場合によっては、アレルギーの緩和剤になるか」

「ちょ、ちょっと待て?! それほどか!」

「恐れながら」


 バクスの興奮は落ち着かない。食べただけでそれがわかると言うことは、と俺も改めて鑑定してみたところ。


【『中和剤チーズクッキー』

 ・軽い風邪程度なら瞬時に完治

 ・先天性、後天性問わず、軽度のアレルギーなら完治見込み有り

 ・怪我などは軽傷であれば瞬時に完治


 】


 などと、バクスが興奮しておかしくないステータスが確認出来たのだが!?


「……イツキが手がけたもので?」

「素晴らしいことですな。アレルギー発見の功績だけでなく、それを完治に導く担い手となれば」

「……下手をすると、イツキが愚か者に狙われるやもしれん」

「そうですな。アーネスト殿の細君であれ、愚かな輩はいずれ出てくるでしょう」

「……以前の護衛担当は、懐妊中だから無理だ。別の……いや、その夫となったゲイリッシュならいいかもしれんな」


 悪友のさらに悪友のあいつなら、イツキへの信頼も既に得ている。ある意味、イツキは恩人だと聞いていたから喜んで受けてくれそうだ。

 とくれば、とクッキーをいくつかゲイリッシュにも見せるのに呼べば。


「わーった。引き受ける」

「頼んだぞ」

「カミさんとの縁を繋いでくれた恩人だぜ? 俺以外の適任はいねぇだろ」

「場合によっては、暗部を率いて良い」

「承知した」


 護衛は無事に決まったはいいが、肝心のクッキー……正確には、イツキは手作りしたらしいチーズのことだ。

 俺はチーズの製造法をよく知らなかったため、簡単に資料を臣下から取り寄せたが……とんでもなく、面倒な仕込みのやり方だった。

 だが、凝り性のイツキを思うととても納得が出来る。バクスの見解も踏まえ、一度アーネストに伝えておく必要があると……執務室に呼ぶことにした。


「……イツキのクッキーが?」

「正確には加えられたチーズらしいが……俺が鑑定。バクスが口にしたことで、薬効などが判明した。軽い回復薬どころではない」

「……それでは。我が妻が、場合によっては良からぬ者から狙われる可能性が」

「察しが早くて助かる。護衛にはゲイリッシュが了承してくれた」

「お気遣いありがとうございます」

「イツキ本人に伝えるかどうかは、お前に任せる。アルベルトのこともあるしな? 子にその技能スキルが受け継がれていないとも言えん」

「はい」


 アルベルトを鑑定してもいいが、技能は後天性で付与されることもあるからな。下手に今鑑定して、危機感を煽らせてはいけない。それも国王として……よりは、近しい知人としての配慮のつもりだ。
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