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番外編②

第63話『わさび菜の使い方』②

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 沸騰したお湯の中に、ほんのちょっとだけ『くぐらせ』ると、鮮やかな緑色になっていく。

 これをザルに上げたら、水気をしっかり切っていくのに置いておくらしい。

 この間に、イツキは卵を茹でていたらしく、ペリぺリと殻を剥いていたわ。手際よく、美しい表面が出てくる。


「私もやってみていいかしら?」

「はい。軽く打ちつけて、ヒビを入れてから剥きましょう」


 水の中で剥くのが初心者には特にやりやすく、実際やってみるとつるんと剥けたわ。ただ、固くなくて少しふにょふにょした感触がした。


「少し柔らかいのね?」

「ちょっと半熟のが美味しいんですよ。固茹でが悪いわけじゃないんですが、少しとろっとした感じがいいんです」

「貴女がそう言うのなら、絶対美味しいはずだわ」


 イツキの料理で美味しくないものはないもの。いつだって、美味しい料理を作ってくれる。そして、それを作れるように共有してくれるのだ。それでどれだけ私たち王族の絆が育まれたことか。

 リュシアーノも、日に日に素敵なレディに成長しているもの。その表れの中に、イツキのおかげももちろんあるわ。私もだけど、あの子にとってもこの人は最高の友だから。

 そして、イツキは貯蔵庫から魚の油漬けを持ってきたのよね。


「卵だけでも美味しいですが、この油漬けも少し使いましょう」

「さらに美味しくなるの?」

「好みにもよりますが、今回は使ってみましょう。おひたしにも合うんです」


 油漬けはイツキが適度にほぐしている間に、私は小さい包丁で卵を大きめに刻んでいく。内側が柔らかいので刃にねちょっとつくけど……色合いが鮮やかでこのまま食べてみたいと思えるくらい。

 その次にイツキが用意した調味料を混ぜ、ワサビナと油漬けをさっと混ぜてから卵も入れると……塩胡椒を加えたあとに、盛り付けていくと黄色、白と緑が美しいサラダになったわ!


「美しいわ」

「おひたしも出来ましたよ」


 そちらは見た目はクタッとしていたけれど、香りが素晴らしく良いものになっていた。

 この二つだけなのに、とても色鮮やかで美味しそうに見えたわ。

 今日は練習だけど、陛下に喜んでいただけるかしら?


「イツキ。この二つを食べる時に、注意することとかあるかしら?」

「そうですね。サラダはコッペパンのようなものに挟んでもいいです。おひたしは、リーゾと食べる方がおすすめですね」

「主食が違ってくるのね?」

「味付けを変えれば、パンだけでもいいですが」

「とりあえず、食べてみていいかしら?」 

「もちろん」


 せっかくだから、イツキが屋敷の料理人にパンを用意させ……ちょっとお腹が空いていたから、綺麗に盛り付けられたサラダたちがすごく美味しそうに見えたわ。
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