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番外編②
第59話『青いいちごのデザートサラダ』
しおりを挟む「うーん。わさび菜は合わんな?」
「悪くないと思ったんですけど、刺激は胡椒だけだと物足りないんですよね?」
「わかる。甘いもんだけだと、なんか物足りないんだよな!」
「だけど……胡椒がこの世界のスパイスの主流ですし。カレーのブレンドパウダーは一般的ではないですから」
「あれは合わんな」
「だとすると……唐辛子もダメ。けど、適度に刺激が欲しい」
この世界のスパイスだとあと何があるか。ワルシュさんとしばらく考えていると、彼が指を勢いよく鳴らしたのだ。
「マスタードはどうだ?」
「! それです!」
うっかり忘れてた。この世界にも粒マスタードやハニーマスタードは存在する。用途はドイツで使用されるようにソーセージの味変とかだ。肉と合わせるのが普通過ぎて、私もすっかり忘れてしまっていた。
「試してみるか? 葉物はルッコラが無難じゃねぇか?」
「いいですね。マスタードには二種類のオイルが合わせやすいので、それも用意しましょう」
「おう。ドレッシングは任せていいか?」
「はい」
さっぱりだけど、ピリリと辛味のあるドレッシングが合うとなれば、レシピも自ずと浮かんでくる。
さっさと作り、ワルシュさんがいちごとルッコラの下ごしらえを済ませてくださったところに……今回はカッテージチーズとドレッシングを混ぜれば。
見た目にも少し食欲が湧くような、まるでブルーベリーのデザートサラダみたいなものが出来上がった。
「お? 美味そうだな」
「試食してみましょう」
「だな」
フォークを手に、まずはひと口。
粒マスタード特有のピリッとした辛味はまず来るが、あとからいちごの甘酸っぱさとチーズのまろやかさ。さらに、ルッコラの適度な苦味と辛味がさっぱりとしたドレッシングとの相性がよくて……つい、二口目といきそうになる手を止めた。
ワルシュさんも我慢しているのか、眉間に皺を深く刻んでいた。
「成功ですかね?」
「ああ。こりゃ、エールも欲しくなるな!」
「ワイン……白い葡萄酒もいいと思います。少し発泡するのもいいですね」
「洒落た食べ方だな」
「異世界の女性にも人気な組み合わせです」
「ミーナに試してもらうのも有りだな」
「お義母さんは?」
「あいつはガツガツ食うタイプだ……」
「あはは……」
とりあえず、第一弾は完成したので……次にアーネストさんにも試食していただこうと彼を呼んだのだが。
アルベルトの子守りで遊ぶのが大変だったのか、ひどくお疲れ様でした。どうやら、つかまり立ちを覚えたアルベルトがあちこちに突撃していくので、瞬足のアーネストさんでも動きが予想出来ずに振り回されたそうだ。
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