王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

番外編②

第15話『色々オーク肉のピクニック料理』①

「まず、冷たいままのフライパンに……お肉、ゴボウと片栗粉を入れてよく混ぜます」

「ほーん？　先にやるん？」

「今回はとろみをつけるタイミングが違うのと……おにぎりに入れやすいようにしたいので。おにぎりじゃなくても、お弁当のおかずにもいいですよ」

「んで……そっちの油も入れるん？」

「はい。米リーゾから抽出した油なので軽い感じになります」

「なんでもありやんなー」


　普通の油やオリーブ以外にも……東方大陸から輸入してきたもんを活用するんはさすがや。一応そっち出身になっとるし、先輩からも色々教わったんやろな？


「火をつけて、焼き目がつくまであまり触らないように。そうしないと衣にした部分が剥がれやすいんです」

「こんなけでコロモになるんや？」

「面白いですよね？　ちょっと煮たからあげっぽくなりますよ」

「……そりゃ楽しみや」


　イツキはんに言われた通りに、焼いてから調味料を入れたんやけど。たしかに、すきやきのような甘辛いええ匂いがしてきたわ！　あとは焦げへんように絡めて……ジンジャーもたっぷりすりおろして入れたから、ええ塩梅や！


「これは少し冷ましておきましょう。次はネルヴィスさんのお手伝いのために、レクサスさんはお肉をステーキのように切ってもらえませんか？」

「カツの部分なん？」

「はい。出来れば脂身とお肉の部分を均一にお願いしたいです」

「おん」


　カツサンドは前にも食ったことあるからなあ。単純な肉の箇所だけでは物足りんのを、甘い脂身が加わり……コロモ、ソースが合体すると柔らかいパンに最高に合うんや！　マスタードとマヨネーズ、葉野菜の千切りともめっちゃ合うねん。


(あれはうんまいけど、オニギリにはどうするんや？)


　米リーゾにソースが合わないわけやないけど、マヨネーズとかも合うん？　食ったことないから想像つかんのやけど、マブダチのイツキはんが言うんやから絶対美味いはずや。

　言われた通りにさっきとは違って、少し厚切りに肉を切りな並べていく。途中、イツキはんに軽く塩胡椒するように頼まれたからそれもしておく。

　キングとクイーンの肉やから、脂身がキラキラ輝いているように見えるわ。ロットと勢いで瞬殺出来たが、近衛騎士だけじゃ多分無理やったな。

　騎士といえど、戦争を経験してない連中がほとんど。逆に自分を含める冒険者だった連中や現役はスタンビートをいくつか経験しとる。せやから、まだ本格的に広がる前に倒せたんや。


(ま。次の出没があっても倒すけどな！)


　死ぬわけにはいかん。自分にはサフィアっちゅー最愛のカミさんがおるからな！　今も料理の練習して、本番でも美味いもん食わせてやりたいんや！！


「では、衣をつけていきますよ？」


　準備が出来たイツキはんのお手本を見るのに頭を切り替え、横から隊長らと覗く。

　小麦粉、卵溶いたの、パン粉の順に綺麗にまとわせ。それを熱した油の中に入れて、ゆっくり揚げていくんやと！　これがカツの作り方やんな！


「火の通り加減は何でわかるん？」

「周りの泡が少し減ったくらいですね。あとは、勘です」

「勘か」

「慣れとも言いますか、料理人は自分の感覚で引き上げのタイミングを見極めます」

「……なるほどなあ」


　イツキはんは自分でプロの料理人やないってよく言うけど、この様子見る限り、先輩が認めるくらいにガチもんのプロやけどな？

　深くは突っ込まへんけど、今が楽しいのならええか！

　カツは少しだけ冷却の魔法をかけて休ませるのとそうでないのとに分け、サンドイッチのとオニギリ用にさらに分けていく。

　んで、オニギリやけど。

　しぐれ煮の方は包むのに、カツのにはノリを使って半分に折り畳むって面白い調理法なのには驚いたわ！？