王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

番外編②

第5話 大量鹿肉を

　アーネストさん達が狩ってきた鹿肉は……大量くらい大量にある。

　亜空間収納に入れておけば、賞味や消費の期限は気にしなくていいらしけど……私にはその魔法が使えない。トリップ特典で魔法は使えるようにはなっているが、レベルや技術はまだまだ底辺。まかない料理番だった時は、ワルシュさん達に必要最低限の魔法は教わったがほとんど生活魔法と言う小さな魔法くらい。

　結婚して、出産もして産後の療養もだいぶ落ち着いた今も……特に必要がないので覚える必要がなかった。自分用に改築したキッチンには業務用じゃないけど大型冷蔵庫もあるから、とりあえず鹿肉の保存は大丈夫。

　だから、魔法を覚えるのは置いといて、今はせっかくのジビエ肉で食べたい料理を作ろう！　材料はお城ほどじゃないが、たっぷりはあるし。


「タルタルステーキは成功したし……今度は何にしよう？　焼肉？　ハンバーグ？　メンチカツ？」


　悩む。非常に悩む。素材がいいからどれもきっと美味しいだろう。

　息子もアルベルトにはまだお肉はあんまりあげられないから、私とアーネストさん以外はお屋敷の使用人さん達しか食事に出せない。

　鹿肉の栄養もだけど、赤ちゃんにはまだまだ刺激が強いはず。資格は取ってなかったが、栄養士の教本は少しだけ以前の世界で読んでいたから……ちょっとだけ知識はある。

　育児は弟の世話を手伝ってた時があるから、今ものすごく役に立っている。柊司しゅうじ、お姉ちゃんはあなたの甥っ子を大事に育てているわよ！

　さておき、目の前の鹿肉に考えを戻そう。

　キルアさん達には、保存食も兼ねてジャーキー作りはお願いしているから……私は私で食卓に出しやすい料理を試作しなきゃ。アレルギー疾患の人は誰もいないし、思いっきり料理は出来る。

　煮込み料理と言うフレンチのようなものはさすがに作れないし……とくれば、ここはひとつ！


「盛りだくさんのカレーにしよう！」


　カレーの仕込みは可能だし、アルベルトには赤ちゃんカレーにしてあげれば大丈夫。仲間はずれにはしませんとも。

　下処理はお城でワルシュさんやジェストさんに筋取りとか教わったから出来る。筋はさすがに食べられないから、出汁のために水から煮込んでおけばいい。

　フォンドボーのやり方は流石に知らないので、キルアさん達にそこは任せてる。下処理と臭み消しをしたお肉はしばらく放置。

　その間に、野菜はじゃがいも抜きなので……これでもかと大量にみじん切りにしていく！！

　刻む道具で役に立つ、チョッパーがあればいいけど……この世界にはないから手作業でやっていくしかない。今度、ハクト親方にお裾分けついでに依頼してみるのもアリだ。新しい紫じゃがいもの料理も何か思い出しておかなくちゃ。

　刻んだ野菜たちは、それぞれ大きめのボウル山盛りくらい仕上がったので……一旦休憩とアルの様子を見に行くのにベビールームに行った。

　ミルクは必要ないけど、たくさん食べて寝て代謝が良い我が息子はおトイレがすごい。メイドさん達に交代でお願いしてても、一定間隔でおしめの取り替えをしなくちゃいけないのだ。

　この間、バクス先生に診ていただいたがお腹の調子が悪いことはないので、しばらく様子見だとおっしゃっていただけた。赤ちゃんは体調不良を起こしやすいけど、我が子にとりあえず無いのは安心だわ。