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番外編

第239話 決行日の密着

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 デートの日がきた。

 その日のために、僕はバーミィ隊長のアドバイスから馬を貸していただいた。ピクニックに行くのと、女性をエスコートするには徒歩より馬がいいのだと。

 そこまで遠出するつもりはなかったが、誰にも邪魔されずに二人でゆっくり過ごしたいことを思うと、それはそうだと納得出来た。

 なので、せっかくだからとバーミィ隊長おすすめの白馬を貸していただけたのだ。


「女はカッコええ男が好きなんや。アイシスかて、ミュラーのカッコええとこ見たいやろし」

「! はい!」


 馬は訓練で扱うほどが増えてきたから、乗れるは乗れる。アイシスと待ち合わせの場所に行く前にも、試しに乗ったけど……ちょっと慣れるのに時間がかかったが、何とか手懐けることはできた。

 なので、馬の手綱を引いて待ち合わせ場所に行けば……アイシスは目をキラキラと輝かせてくれたんだ。


「素晴らしいです! 立派な白馬ですね!!」


 貴族のご令嬢だけど、武の道に走っているからか……宝石や衣服よりも、こう言うのが好きなんだと改めて可愛いなと思えた。

 女性としてとかじゃなく、『アイシス』だからって思うと……好きって気持ちが溢れるんだ。僕との訓練にも真剣に立ち向かってくる勇ましいところが……最初に好きになったきっかけなんだよね。

 流石に今日はワンピースを着てたけど、動きやすそうな仕立てだから万が一の事態を予想しての選択だろう。こう言うのも、アイシスらしくて好きだ。


「お待たせ。二人乗りで行くけど、大丈夫?」

「はい! 小さい頃は兄上達に乗せていただいたので」

「そうなんだ。副隊長?」

「副隊長もですけど、長兄の方もですね」


 いずれ……アイシスをお嫁さんにするときにご挨拶に行かなきゃだけど、どんな兄上様だろうか? 怖い方じゃないといいけど……庶民の僕が、いつか騎士爵の地位を手に入れるまでは会えないかな? もっと大きい関門はお父上の公爵様だけど……大丈夫だよね?

 とりあえず、アイシスと馬に乗ってからピクニックの目的地に向けて出発することにした。

 乗るまでは良かったんだけど……!?


「あ、アイシス?」

「ふふ。しっかり掴まった方が落ちないですから」

「そ、そうだけど」


 正面からぎゅっと抱きつかれて、柔らかい身体が密着している状態。恋する男相手に、実に大胆な行動力にドキドキが止まらない! 心臓がうるさい!!

 だけど……めちゃくちゃ嬉しくもあって、手綱をきちんと捌いて馬を操った。ゆっくりだと思ってたけど……早く目的地に着いて、アイシスともっと触れ合いたい。

 とびっきり素敵なキスをしてあげたい。

 数日前にイツキさんと作った、あのレモンのケーキを一緒に楽しく食べたい。

 そう思うと、気持ちが昂っていくけど……アイシスを絶対振り落とさないように気をつけて、馬を走らせたのだ。
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