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番外編
第227話『熱々パイナップル入りピザ』
しおりを挟む「こいつだ」
しばらくして、ワルシュが持ってきた『ピザ』と言う料理は……ワシが今まで見たことがないものじゃった。
コルト氏がこれまでの王族に振る舞われたものともまったく違うもの。
薄く平たい大きな円。それには先ほどの若者が教えてくれたように……チーズが上にたっぷり乗って、香ばしく焼かれていた。
下にはソースや具材が隠れておる。これは……ナイフとフォークで食べるのじゃろうか??
「……これがピザなのか?」
「切り分けるからちょっと待ってくれ」
と言って、何故か円型の……刃がついているような道具を取り出し。グッとピザに押し付けて……転がして切っていったのじゃ!? なんと珍妙な!?
「……それはなんだ?」
「親方に頼んで作ってもらったものだ。ピザカッターっつって、イツキが提案してくれたんだよ」
「……あの子か」
ますます、感心してしまう。イツキくんの知識は、やはり何百年生きているコルト氏以上じゃ。このように便利な道具をあの子はどこで知ったのじゃ?? 下手をするともっと何か変わったものを知っているのじゃろう!
「んじゃ、食ってくれよ。おすすめは手づかみだが、ナイフとフォークでもいい」
「……手づかみ?」
「ピザの醍醐味らしい。ま、今回は具材がゴロゴロしてるから、落ちやすいしどっちでもいいぜ」
「……ふむ」
せっかくのおすすめの手法、試してみるのもありじゃな。
とても熱そうじゃが、切れ目に沿ってゆっくり持ち上げれば……三角に切ったところから具材とソースの色合いがよく見えた。
キラキラ輝いているようで、とても……美しかったわい。
(ああ、こぼれてしまう……!)
ワルシュの言った通り、見つめていたらだれて落ちていきそうだったため、慌てて先端を口の中に入れていく。
まず感じたのは、熱。
窯で焼いたのであろう。出来立て熱々のそれに、ワシはついはふはふとしてしまう。まだフルコースが撤廃されて二年程度の今でこそ、開設された食堂で出来立てを食べれるが。
ワシは長年、フルコースの残り物をたらふく食ってきたのじゃ。
良くてぬるい。
悪いと冷たい。
そんな料理を長年食してきた身なので……やはり、こう言う出来立てで美味い料理のありがたみを感じてしまう。
チーズが伸びるだけでなく、塩気とまろやかさが段違いじゃ。ソースは甘辛く、下のもちもちしたパン生地との相性が良い。
さらに、具材には燻製肉の厚切りにほぐしたとうもろこしと……あとは?? 噛むとジュワッと汁があふれ、甘酸っぱい……少し前に食べたような??
「パイナップル入りだぜ」
「! これか」
ワルシュが正解を教えてくれたことで、もうひと切れいただくと……食事なのに、果物も入れると言うこの組み合わせは至高じゃ!!
手が止まらん!!
老いているのに食欲が止まらんのじゃ!!
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