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番外編

第218話『一から手作り揚げ餃子』①

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「では、リュシアーノ様。このボウルの中身を思いっきりこねこねしてください」

「はーい」


 パンじゃないけど、粉物って色々材料入れると思ってたのに今回のは薄力粉と水だけでいいみたい。手を入れてこねたら柔らかい粘土みたいにねちょねちょしたの。

 イツキは私が混ぜている間に、肉の塊をざっくり切り分けていたわ。もしかして、ミンチも手作りするのかしら?


「リュシアーノ様、もっとしっかりこねていいですよ?」


 ちょっと手が止まっていたら注意されたわ。丁寧口調だけど、結構砕けた付き合い方なのよね? 私が王女だとか子どもじゃなく、対等な相手として……ネルとは違うけど、嬉しいことだわ。


「パンって言うより、白玉作っている感じね」

「そもそもの粉の種類が違いますけど、中力粉があればうどんも作れますし」

「そうだわ。最初イツキが作ってくれたの……あれって手作り?」

「ええ。実家ではよく。力仕事だったので子どもの遊びにも使われていましたよ」

「ふみふみするから?」

「弟と袋が破けないように気をつけました。明太子の釜玉とか好きだったんですよね」

「……食べたいわ」


 城では明太子のメニューが王族でも食堂でも出るけど、学園の食堂にはまだないのよね? 明太子は前世でも大好物だったから、お米があるとなると無性に食べたくなるわ。おにぎりとか白米にオンとか!


「ふふ。また機会があればお作りしますよ」

「お願いするわ。……これくらいでいいかしら?」

「ええ。大丈夫ですね」


 まとまった生地をしばらく寝かしている間に、さっきイツキが大雑把にカットしたお肉を……私が叩くんですって。これも鬱憤を晴らすのに最適な方法みたい。


「……ぐちゃぐちゃにしていいの?」

「ええ、思いっきりどうぞ」


 確認をすれば、イツキはいい笑顔になったから……両方に構えた子どもでも扱える包丁をお肉に振り下ろした。

 ダンっとはいかないけど、ムニュムニュしたような感触が伝わってきたの。だけど、これをミンチにしたいから……何度も何度も叩いたわ!


(……ネルともっと触れ合いたいのに! この身体が! 年齢が!!)


 悶々している鬱憤が徐々に膨れ上がり、肉を叩くと気持ちが伝わっていくように感じた。邪な感情でしかないけど、仕方ないもの。

 私はネルの婚約者なのに、恋人らしい事がほとんど出来ないんだからぁ!!?


「リュシアーノ様。同じ方向だと他が叩けないので、角度を変えたりしましょう」


 そして、イツキは的確な指示を出してくれる。私の顔を見ると苦笑いしてたけど、今作っているのは二人のおやつだもの。

 出来れば、美味しいものを作りたいわ。私はそれから、たまに叩く場所を変えながら……子どもが作ったにしては、綺麗なミンチ肉を仕上げることが出来たの。

 そのおかげで、鬱憤が少し落ち着いたわ……。
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