王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

番外編

第187話『サンドイッチの種類』

「お待たせ致しました。食事向きのものを二種。フルーツサンドもご用意させていただきました」

「ありがとうございます」


　甘いものだけだとしょっぱいのも欲しくなってしまう。それをよくわかっているキルトさんの気遣いは流石だ。この屋敷に来てまだ数ヶ月程度だけど、私とアーネストさんの食好みもだいぶわかってくれている。私は日本人を隠してても生魚が食べたい時は、事前にお伝えしてあるけど……今日はどんなラインナップだろう？

　アルベルトはまだ寝ているので、ベビーベッドから離れて……サンドイッチを置いてもらったテーブル前に腰掛ければ、私は思わず目を丸くした！


「……いかがでしょう？」

「素敵な組み合わせです！」


　アボカドにハム。

　スモークサーモンにきゅうり。

　フルーツはパイナップルだ。

　どれも好きな組み合わせだから、本当に嬉しい！！　前に一度お話ししただけなのに、よく覚えていらっしゃる。


「奥様がお好きだとおっしゃっていましたので」

「本当にありがとうございます。いただきますね」


　まずはサーモンのをひと口。独特の風味に塩気がマッチしていて……旬のきゅうりの薄切りがぽりぽりしていて、歯で噛むのが楽しい。マヨネーズは薄めだけど、塩胡椒がサーモンにしっかり味付けされているので物足りなさを感じない。

　次にアボカドとハム。ハムはかなり薄めにスライスしたのを使ったのか生ハムに近い食感。塩気は生ハムまでいかずともアボカドのクリーミーさを落ち着かせてくれる味わいだ。

　どちらもパンと非常によく合っていて食べ応えがある。サイズはひと口サイズだけど、一種類につき三個くらい用意されていたが……空腹でどちらもペロリと食べ切ってしまった。パイナップルのも生クリームが甘過ぎず、舌安めにちょうど良い。

　あっという間に食べ終えたので、キルトさんはほっとしたような息を吐いた。


「お口に合ってようございました」

「相手のことを思って、丁寧に作られた気持ちが伝わってきました。良い傾向ですよ」

「相手のことを……なるほど。たしかにそうですね」

「私や旦那様だけでなく、どの人にも等しく提供するのは料理人として大事ですよ？」


　偉そうな言い方だが、上に立つ存在となったのだから……日本人の心得のようなものは伝えたい。きっと伝えて損はないはず。私もアルバイト時代はよく店長とかに厳しく言われたのよね？


「……さすがは奥様。素晴らしいお考えです」

「昔の受け売りですけどね？　サンドイッチごちそうさまです。ちょっとお腹が膨れました」

「また何なりとお申し付けください。では、皿は下げておきます」

「ありがとうございます」


　たくさんではないけど、適度に満たされて眠気がきたので……アルベルトはまだ寝ていたから、自分のベッドでお昼寝をすることにしたのだった。