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番外編

第176話『待ち焦がれたポケットサンドイッチ』

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 夕食の時間になるまで、俺はとても気分が良かった。

 軽食の時に食べたあのポケットサンドイッチがまた食べられるのだと思うと、仕事の進みが早い早い!

 近侍らに少し飽きられるくらいのはしゃぎぷりだが、仕方がないと言えよう。イツキ直伝の料理が久しぶりに食えるからな! ワルシュもそこそこ取り入れてくれるが、奴が言うにはまだまだイツキには追いつかんらしい。

 たしかに、イツキが手がける料理のほとんどが東方大陸のものにしては、変わっているのもが多い。しかし、全部が美味揃い。ものすごく美味いのだ!


(あと数枚で夕食。ポケットサンドイッチ目前!)


 笑われるだろうが、子どものようにはしゃぐ気持ちを抑えられないでいる。それだけ、あのポケットサンドイッチは美味すぎる上に食べやすかった。仕事を早く終わらせても、時間になるまで食べられないと言うのに……我ながら本当に子どもに戻ったようだ。

 幼い頃は、ワルシュと出会い、気が合ったら四六時中はしゃいで遊んだものだ。あれも実に懐かしいことだ。

 今日のノルマを終わらせてからもまだ時間があったので、ヘルミーナとジェラルドのところに行き……たくさんジェラルドを抱っこしたり、抱き上げてやった。


「あーう、と、と!」

「おお! 父様と言いたいのか?!」

「ふふ。まだ少し難しいですが、わたくしのことも母様と呼ぼうとしてますわ」

「……子どもの成長は早いな」

「ええ。リュシアも淑女としての成長は素晴らしいと報せがよく来ますわ」

「……そうか」


 ネルと婚約した時は天変地異でも起きるんじゃないかと思ったが、子どもの内面の成長も早いものだな。バックにイツキも居ては下手に口出し出来ん。ワルシュから聞いたが、叱る時は怒鳴らずに静かに圧力をかけて怒るそうだから……ヘルミーナと同等に怖いのだろう。それは避けねばならん。

 そんな団欒を過ごした後に、執事バトラーに呼ばれて食堂に向かえば……頼んでいたポケットサンドイッチが食卓の上に並んでいた。

 今日一日頑張った褒美が目の前に!

 神よ、イツキよ、感謝申し上げます!!

 その感謝を告げながら席に着けば、ヘルミーナも嬉しそうにため息を吐いて神への祈りを捧げていた。


「では、いただこう!」


 俺のポケットサンドイッチは。

 メンチカツ。

 煮込みチーズハンバーグ。

 白身魚のタルタルフライ。

 どれもボリュームは凄いが、今日も仕事を頑張ったのだからいいんだ!! と、ハンバーグのを手に取って勢いよくかぶりついた!!
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