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番外編

第173話 王より一個人として①

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 悪友に何か軽食を作ってもらおうと、顔見ついでに中央の厨房に来たんだが調理をしているわりには異様に騒がしかった。

 また誰かがワルシュの雷を落とす原因を作ったのかと思えば、そうではなく。久しい人物の来訪だった。

 元は厨房のまかない料理番で、今は近衛騎士団のアーネストの妻。一児の母となったイツキだ。髪も少し伸びたのか以前より女性らしく見えた。服装も関係しているが、ワルシュがわざと男装させていた時は鑑定せねば完璧に男に見えていたからな……。

 それはともかく、俺の妻や娘の友人でもある彼女が城に来るなど……いつ以来か? 結婚式を挙げた直後以来じゃないか?

 身重になってからは、ヘルミーナやリュシアーノは直接屋敷へと遊びに行ってたらしいが。

 そんな彼女は、腕に自身と髪色がそっくりな赤児を抱いて料理人らと語り合っていたが。二人ほど近衛騎士の団員らが居たが……若いが、片方は見覚えがある女だった。たしか、アーネストの妹で新人騎士のアイシス?

 義姉となったイツキが来たことで挨拶に来たにしては、いささか不思議な組み合わせではあったが。

 だが、ワルシュにイツキの後を引き継いだまかない料理番の恋路の手助けに来た理由で、彼らも協力していたと聞いて納得出来た。

 相変わらず、男女問わず手を差し伸べる優しい女だ。イツキは。


「おい、リュカルドも食え」


 考えにふけっていると、ワルシュが何かを俺に渡そうとしていた。パンのようだが、具が挟んで……挟んで??

 どういう仕組みかはわからないが、不思議な挟み方で具がパンの中にあったのだ。


「……サンドイッチか??」

「厚めに切ったパンを袋状にして軽く炙ったやつに、具材を入れた。イツキ考案だぜ? 中身もボリュームたっぷりだし美味い」

「……そこまでか」


 色々変わった事を受け入れるものだな、と感慨深くしていたところに、この魅力的な食べ物。

 昼は一応食したが、執務に明け暮れて……空腹が耐えられなかった。だから、ここに来たのだともう一度思い出してそのサンドイッチを受け取った。

 普通以上に、ずっしりと重かった……。
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