王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

番外編

第140話 出産へ

　痛い……。


　痛い、痛い！？


　苦しい以上に痛い！！


　でも、これは大事な状況なのだ。


　私のお腹の中で、大事に育ってきた赤ちゃんが出てこようとしているのだ。


　その手伝いになるために、私はベッドの上で力みながら赤ちゃんが出てきやすいように頑張った。


　だけど、そう簡単に出てくるわけではない。私の本当のお母さんも、私や弟を産むときはかなり時間がかかったと言っていた気がする。


　どれくらい時間がかかるかわからない。


　だけど、私も頑張らなくちゃ。


　生きて。


　この腕に抱いて。


　アーネストさんと、いっしょに生活していくんだから！


　美味しい料理をいっぱい作ってあげたい。食べてほしい。


　いっしょに生きたい。


　アーネストさんと、いっしょに。


　その願いを、叶えたい。


　異世界にトリップして……色んな出会いをして、アーネストさんと結婚して、赤ちゃんを授かれた。


　その生き方には、今は後悔していない。この世界でトリップしたての頃は違ってたけど、今は違う。


　私は、義理でも両親がいる。


　大事な旦那様もいる。


　境遇が似た友人もだけど、たくさんの仲間もいる。



　幸せだから……あなたに会いたい。



　お母さん……頑張るから、あなたも安心して出てきて？


　そう願って、どれほど時間が過ぎただろうか。



　しばらくして……少し遠く聞こえた気がしたが、赤ちゃんの産声が上がったのだった。