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番外編

第93話 なかなか大変

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「ふーん、男の子なのね?」


 私は学園の寮に戻る少し前に、イツキのいる屋敷に遊びに来たの。

 イツキのお腹も、半月くらい経っただけなのに妊婦さんらしく目立ってきたわ。いよいよ、妊婦さんの忍耐が問われる時期になってきたのね。

 とは言え、第一子がスコープの魔法でわかったらしいけれど……男の子かあ。


「はい。編み物以外にも裁縫を習いはじめたので……色々準備をしているんです」


 イツキはとっても嬉しそう。いいえ、笑顔以外の表情はあんまり見たことないけど……さらに、輝いているって言っていいかしら? そこはやっぱり、『母親』になる表情と言っていいわ。


「……使用人達には、仕事振ってる?」

「もちろんですよ。私が関わるのは、ほんの一部ですし」

「張り切るのもいいけど、無茶しないようにね?」

「ふふ、そうですね」


 私だって、若菜前世の記憶があっても結婚とか妊娠は経験しているわけじゃないから……今のお母様がジェラルドを産むまでどれだけ大変だったか……その程度の知識しかないわ。最低婦人科には行ってたけど、あれは月一の体調不良をコントロールするためだったもの。

 転生した今は、まだそのシーズンじゃないから……処置とかちょっと怖いわ。ちゃんと道具が揃っているわけじゃないもの。


「イツキがお母さん……私がネルと結婚出来る世代になったら、もっと子どもが居そうだわ」

「そうかもしれないですね。アーネストさんはこのお屋敷を任せるのに、男の子は欲しいと言っていましたが」

「最低限はね」


 爵位は騎士爵しかないけれど、アーネストはネルの実家には劣っても……家格の高い貴族の次男坊。

 屋敷をひとつ与えられたのだから……それくらいは考えなくちゃいけない。女が悪いわけじゃないけれど、出来れば男がいいのは世間体としては外聞がいい。

 私だって、ジェラルドが生まれる前は他国に嫁ぐよりも……女王擁立派があったらしいから。政治問題って色々面倒くさいのよねぇ?


「さて、せっかく最後のお休みですし……何か食べたいものじゃありますか?」


 ちょっと陰鬱な話題を払拭しようとしてくれたのか、イツキは手を叩いてから笑顔になった。本当に……アーネストは幸せ者ね? こんないい奥さんをゲット出来たんだから。


「んー。そうね……ちょっと肌寒くなってきたし、あったかいのとか食べたいわ」


 今日来たのは、おやつの時間よりお昼前なので……実はお腹ぺこぺこなのよね。イツキもまだ料理が出来るらしいから、一緒に作るの。


「んー。ですと、ちょっと変わり種の中華まんはどうでしょう?」

「肉まん!?」


 イツキのを食べたことがないわけじゃないけど……食べるのは随分と久しぶりだわ!!
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