王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

番外編

第74話 受け継いだまかない料理番②

「何してるんス？　エリオ？」


　俺が材料を集めていた途中で、同期の女料理人であるカミオが声をかけてきたのだ。イツキさんが辞める前後くらいで、こいつはやっと担当が皿洗いの雑用から皮剥きへと昇格したばかりだけど。

　女なのに話し方が男みたいで独特だが、まあ嫌いじゃない。むしろ、好ましく思っている方だ。タイプかと言えば、顔はまあタイプではあるけれど。


「まかないのために、材料集めてんだよ」

「……この並び、まさかカレー！？」

「そーそー。まだ俺はそんなにも作ったことないし……なんか食いたいもんでもあんの？」

「いいんスか！？」


　仕事がひと段落ついているから、気になってこっちに来たんだろうし、せっかくだから意見は聞きたい。料理長達は今いないし、先輩達の意見ももちろん欲しいが……たまには同期のも聞いておきたいんだよな。イツキさんが俺とかミュラーの意見を聞いてくれたのと同じように。

　カミオはカミオで、獣人だったら尻尾でも振りそうなくらいに喜んでうずうずしていた。


「……決まってんのか？」

「あれっス！　卵を目玉焼きにして、カレーは刻んだ野菜たっぷりの！」

「んー？」


　レシピ帳をめくってみると、それらしい料理はちゃんとあった。これかカミオに聞くと強く頷いた。


「それっス！　『ドライカレー』っス！！」


　香辛料の使い方も、とろみのある他のカレーとはそこまで変わらないが……作り方が全然違う。野菜に芋を入れず、他は全部刻んで、肉もひき肉を使う。

　仕上げに、目玉焼きを半熟焼きにして載せると……崩した黄身と合わせてなお美味しいとイツキさんのメモに書いてある。これは……面白いな。寸胴鍋と違って、鉄鍋のフライパンでも作れそうだ。

　だけど。


「カミオ、今他の仕事は？」

「？　まだ指示はないっスけど」

「手伝ってくれ。これ野菜刻むのめちゃくちゃ多いんだ」

「！　先輩に許可もらってくるっス！」

「おう！」


　玉ねぎ、にんじん、セロリ……とにかく、全部細かく刻まなきゃいけない。中央厨房だけの仕込みでよくても、めちゃくちゃ腹を空かすメンバーばかりだし……カミオと頑張らないと作れそうにないからな？

　俺はカミオが戻ってくるまで、とりあえず他の材料も集めておくことにした。

　んで、カミオが戻ってきたら……ただただひたすら、皮と芯を取り除いた野菜達を刻んで刻んで、刻みまくった！！

　手が痛くなりそうだけど、これ前はイツキさんひとりでやってたと思うと……ますますあの人は凄いと感心してしまうばかりだ。