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番外編

第73話 受け継いだまかない料理番①

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 イツキさんが、まかない料理番を退職して……もう数ヶ月。

 まだ・・数ヶ月なんだけど、色々厨房は大変だった。特に『まかない』については。


「……うーん」


 最初こそ、イツキさんが身ごもって日が浅いからってことで、レシピや作り方も色々教わってきたが。料理長達もそれはもちろんだが、何事も限界があって当然。そろそろ作り慣れたもののレパートリーが尽き、新しいレシピに挑戦しなくてはいけない。

 その中のひとつに、俺はぶつかっているんだ。


「……カレーライスか」


 見た目はゲテモノにしか思えないような、茶色のソースが特徴的な料理。しかし、中身は香辛料だけでなく野菜もたっぷり使い、リーゾにかけると最高に美味い料理。

 これは食堂のメニューにもなっているんだが、そろそろ俺がイツキさんから任されているまかない料理番としても、挑戦していいって料理長から言ってもらえたんだ。だから、レシピを見つつ、作り方も料理長のを見たんだけど。


(……辛味が強いんだよな? 悪いことじゃねーけど)


 近衛騎士で、ダチのミュラーが言うんだよな。美味しいけど、ちょっとだけ舌がヒリヒリするのが苦手だって。その意見はどうやらミュラーだけじゃないようだし……厨房のメンバーの中にいてもおかしくはない。だから、ちょっと先輩らに聞くことにしてみた。


「気にはならないけど」

「あ、でも辛味強いね?」

「俺は好き~」

「……私はちょっと辛い」

「イツキさんのは、ちょうどいいって感じだったなあ?」


 とまあ、大半が辛いとあったので、俺はまたレシピと向かい合うことにした。レシピはもはや、『本』と言えるくらい記された量は多く、イツキさんの頭の中にはこれだけの知識が……と思っても、まだほんの一部でしかないと俺は思ってる。

 だって、俺とミュラーのリクエストにも瞬時に対応してくれてたから……まだまだ公表し切れていない部分も多いはずだ。

 とりあえず、カレーの項目を見たんだけど……よく見ると、単純に『カレーライス』だけじゃなかったんだ。ページをめくると、後ろの方に類似したレシピがいくつかあったんだ。


「……チキンカレー、カツカレー、牛しゃぶカレー……バターチキンカレー??」


 何かの魔法の呪文かと思えるくらい、種類がどんどん出てきた。ひとつの項目に集中し過ぎて、後ろを見るのを忘れていたようだ。ちょっとドジったが、これでまかないの種類が増えたのなら……色々試してみようじゃないか。

 けど、どれが一番食べやすいのか……俺の技術を考えても、色々読み込むしかない。まずは、材料集めからはじめることにした。
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