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番外編

第57話 妊娠中の気遣い

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 新しい生命が宿っている……私のお腹。

 少しずつ少しずつ、ふくらんでは張っていき中の赤ちゃんもきっと大きくなっているのだろう。そう思うと、嬉しさも日々大きくなっていく。

 だって、まさか。異世界転移だなんて事態に遭うだけでなく、大好きな相手が出来て……その人と結婚出来ただけでなく、お腹に生命を宿すまで至るとは予想外だったから。


「ふふ……ゆっくり大きくなってね?」


 その日も、夫であるアーネストさんを見送り、お家のこともそこそこ終わらせてから、休憩するのに部屋の椅子に座っていた。適度に体を動かすのがいいと、昔お母さんが言っていたような気がしたけれど……その知識もうろ覚えだ。私がこちらに来る数年前に、両親は他界していて家族は弟一人だけだったから。


「……お母さん達にも、孫を見て欲しかったなあ」


 こちらの世界では、義理といえど両親はいる。ワルシュさんとサーシャお義母さん達がいるけれど……正直言って、年がそこまで離れていないからお兄さんお姉さんの感覚でいるのは内緒だ。だって、おふたりの本当の子供が出来たとしたら、姉弟か姉妹になるのは色々複雑。

 それはいいとしても……やはり、故郷の家族に見てほしい気持ちは……あちらへの未練があるのからだろうか? 同じような状況のリュシアーノ様からは、特に聞いてはいないけれど。


「……弱いかなあ。私」


 ふくらんだお腹をさすっても、まだまだ体が育っていないので蹴られる感覚はない。宿っている実感はあっても、そこに『いる』としかわかっていないのだ。

 あと少しで、選出した使用人さん達がここに来るとは言え……私はうまくやっていけるのだろうか。

 アーネストさんの奥さんだから、一応は貴族となってしまったんだもの。そちらへの実感はまだ得ていない。


「……お腹空いた」


 それともうひとつ。

 つわりが落ち着いたことで、食欲が異常に増しているのだ。栄養を赤ちゃんに行くようにしなくちゃだから、たくさん食べなきゃいけないのは……バスク先生にも教えていただいたので、気をつけてはいたが。

 予想以上に、お腹が空くのだ。それはもう大食い並みに。

 とくれば、ここはひとつ。


「……いいよね? アーネストさんは夕方まで帰って来ないし」


 久しぶりに、ジャンキーかつズボラ飯を作ろうではないか。赤ちゃんへの栄養にはあまりよくないが、久しぶりだからいいとしよう。

 決めたら、すぐにキッチンへ行くことにしたのだ。
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