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番外編
第46話 緊張し過ぎ
しおりを挟む(き、緊張してしまうわ……)
お茶会から、イツキ様からご提案いただいたお菓子教室。そこからさらに、お茶会へと戻ってきて……私達が作ったお花入りのクッキーを、陛下や妃殿下が口になられることとなってしまった。
イツキ様のご提案とはいえ、王族の方々とごく普通に接する事は凄いことだ。やはりそこは、国の救世主となられた功績もお有りだからだろう。殿下とも私とマーキュリー以上のご友人でいらっしゃるから、殿下も特に異論をおっしゃることはなかった。
それに何より。
子供とはいえ、私達に意見を聞いてくださるのが驚きだった。王族のご命令にされても良いのに、イツキ様もだが殿下も私達に聞いてくださったのだ。そのようなこと、普通ならまずあり得ない。
だけど、私とマーキュリーはそのお気遣いが嬉しくなり……『是』と答えたのだ。それで今、お茶会のお部屋に戻ってきて陛下方に召し上がっていただくところだ。
「ほぅ? 可愛らしいな?」
「ええ、陛下。とても」
そして、陛下方はとても感心されているかのようにクッキーを眺めていらっしゃったわ。クッキーの生地はともかく、お花には砂糖漬けのように味はつけていない。味見もしていないのには、殿下が『一緒に食べて感想を言い合いましょう』とおっしゃったので私達もまだ口にしていない。
そこもまた、イツキ様への信頼がお強いからだろう。毒味などは普通のイメージだとありそうなのに、イツキ様が関わるとないのか……ごく普通の家庭のような雰囲気に流されてしまいそうだった。
実際、陛下方の前に執事らがお出しになっても、陛下や妃殿下は何も気にされていない。むしろ、それで良いと言わんばかりにクッキーを手に取ってくださった。
「白い方は砂糖とかを使ってお化粧したものです。お花だけは普通に焼き込みました」
「面白いな? 全く焦げていない」
「お花にもよりますが、スミレは失敗しにくいので」
イツキ様からの説明をお聞きした陛下は、私が頑張ったアイシングの方のクッキーを口にされたのだ。
パキッ、パキッと音が聞こえてきて……口に入れるとさくさくと音が聞こえてきた。どのような感想があるのか、さらに緊張しながら待っていると……陛下は目元をゆるめて何度も首を縦に振られた。
「甘味は強いが、クッキーの方と食べるとちょうどいいな? 花の味は今回控えめだが……美味い」
「ありがとうございます。クッキーの方はほとんど、マーキュリーさんやエイミーさんが作られたんです」
「そうなのか? 二人とも、美味しいぞ」
「「あ、ありがとうございます!!」」
陛下からのお言葉に、緊張の糸がほぐれて立っていられなくなりそうだったが……なんとか堪えた。子供だからって、我慢は大事なのよ。エイミー。
そう自分に言い聞かせ、最敬礼で感謝の言葉を述べると……そのあとは、私とマーキュリーもお茶会に加わることとなり。アイシングクッキーをきちんと口にしてみると、たしかに陛下がおっしゃる通り、甘味は強いがクッキーと食べるとちょうど良い味わいだった。
それと、お茶によく合ったのよね。
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