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番外編

第31話『愛情離乳食』①

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 厨房も、城に比べれば当然狭いものだけれど……イツキは気にせずにテキパキと用意をしていく。材料と道具、どれが必要なのかを身重な体なのに、すぐに用意していくのだった。

 卓の上に置かれたのは……カンラとパンポン?

 イツキが城にいた頃、共に作らせてもらうことで何度か見た野菜だったわ。大ぶりで、美味しそうに見える食材。


「今回は、この二つをよく洗って……二つとも皮付きのまま使います」

「……皮を?」


 ワルシュ先輩の料理だと、皮を取り除くのが多いが……イツキのはまた違った料理だもの。興味が湧くわ。

 イツキは私の問いかけに頷いてから、蛇口で二つをよく洗って、パンポンは豪快に大ぶりの包丁で真っ二つ。カンラはざっくり切っていく。ただ、それをさらに四角く細かく切っていくのだ。


「煮溶けやすくするのに、今回は細かくするんです」

「……カンラを水に浸けるのは?」


 カンラだけ、銀のボウルに入れた水の中に浸したのよね。すぐに白く濁ったから……不思議にしか見えない。これはなんのためかしら?


「少しあく抜きをするためです。水気を切ってから、次は軽く水で茹でます」

「……パンポンはいいの?」

「パンポンにはあくがほとんどないので」


 食材によって、色々扱いが違うのね? ただの王妃だったらここまで興味を持たないでしょうけど……私はイツキの友だもの。ジェラルドのために色々考えてくれる彼女の気遣いを無駄にするつもりはない。

 イツキは、次にパンポンとカンラを軽く沸かしたお湯の中で煮るようだけれど……お湯が少ないんじゃないかしら?


「イツキ? お湯が少ないんじゃなくて?」

「蒸す方がいいんですけど、道具がないので。茹でるのと火の通りがはやいんです」

「……そうなの?」


 メイドを見ても、彼女は知らないからか苦笑いして首を横に振ったわ。多少は調理に心得があるメイドの知らないことをイツキは知っている。ワルシュ先輩の養女でも……どこで知ったのだろう。東方大陸で?


「さて、茹でたら」


 そのまま鍋の中で、潰すと思ったら……笊にあげ。

 空のボウルに移して、木の棒ですりつぶしていく? わざわざそんな手間をかけて? ただ鍋の中で潰すだけではいけないのね?


「……色々手間がいるのね?」

「普通の料理もですけど、赤ちゃんには特に気をつけませんと。お腹に負担をかけて体調を崩したら大変です」


 本当に、この人は。

 さりげなく、そのような言葉をかけてくれるのだから。私も嬉しくなってきたわ。だから、ジェラルドをメイドに預け、私もしていいか聞くと。


「もちろんですよ。お母さんの愛情がこもればもっともっと美味しくなります」

「……ええ」


 柔らかく煮たおかげか、潰すのは私でも簡単に出来たわ。
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