王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

番外編

第25話 数ヶ月ぶり

　一時の休みとは言え……愛する方が戻っていらっしゃった。

　僕の愛しい愛しい……王女殿下。リュシアーノ様がだ。

　夏休暇前に、試験休みと言うことで城に一時帰還なされたのです。


「お待ちしておりました、王女殿下」

「久しぶりね、ネル」


　侍女らが待機している場所ではかしこまった態度を見せましたが、リュシアーノ様が下がるように指示を出すと……完全に彼女らが出て行ってから、僕に抱きついてこられました。


「おっと」

「ふふふ！　このために、試験頑張ったんだから！」


　まだ幼い身体なので、女性特有の柔らかさには程遠いですが。

　それでも！

　愛する方からの抱擁に喜ばずにはいられません！！


「僕も嬉しいですよ」

「ふふ。……短いけど、ネルと一緒なのは嬉しいわ」


　ああ、そのように。

　頬を……僕の腹部あたりにすりすりしないでください！？

　色々我慢出来ないじゃないですか！？　騎士以前に、男として我慢しますが。


「……ありがとうございます。お疲れでしょう？　何か飲まれますか？」

「そうね？　とりあえず座りたいわ。ネルといっぱいお話したいの」

「はい」


　あらかじめ用意していた、冷たいレモン水で話に華を咲かせ。

　学園でのご学友との交流を聞いた時にはひと安心出来ました。リュシアーノ様は身体こそは幼くとも、中身は妙齢の女性。

　その不釣り合いな状態で、今は結婚してまかない料理番を引退したイツキ以外にご友人が出来るか不安なところはあったのですが。

　杞憂で良かったですよ。


「それでね？　皆イツキのことを知っていたのよ」

「イツキをですか？」

「ワルシュの養女むすめのこともだけど、アレルギーをどうにかしようとしてくれたでしょう？　学園の食事事情も色々改善されたんだって。お城で以前やってた慣習みたいに……使用人には残りを食べさせてたそうよ？」


　アレルギー症状も出てたみたい。

　リュシアーノ様は、中身が妙齢の女性の理由は……魂が、イツキと同じ世界の住人だったから。

　知識や落ち着き具合も、幼い年相応の物ではありません。

　だからか、学力なども同学年のご令嬢方と一線を画していらっしゃいます。


「……そうですか。改善されてよかったです」

「イツキにも会いたいわ。今妊娠中よね？」

「そうですね。城から屋敷に移ってからは、僕はあまり行けていませんが」

「だったら……一緒に行かない？」

「是非」


　断る理由もありませんからね。

　イツキは元気にしていると、アーネストから聞きますが……たまには友人としても顔を合わせたいですし。

　日取りを決め、アーネストにも確認を取り。

　僕もですが、リュシアーノ様も数ヶ月ぶりにイツキと再会することとなりました。