上 下
440 / 782
全員のまかない

第20話 まかない婦のまかない①

しおりを挟む
 異世界にトリップして……約三年の月日が経ち。

 私は今日、大好きな人と大好きな人達の前で結婚式を迎えることになった。

 本当のお父さんじゃないけど、異世界での保護者であるワルシュさんが今のお父さんなので……綺麗に着させてもらっているウェディングドレスで、教会以上に大きい大聖堂と言うところの廊下を一緒に歩いている。

 去年、ワルシュさんとお義母さんの結婚式の時にも思ったが……ヴァージンロードに例えれる絨毯の部分は、とても長い。

 トリップ前に、日本での結婚式に参加した時はすぐだったのに……ここはすごく長いのだ。

 旦那さんになってくれるアーネストさんまでのところへはなかなか遠いけど、少しずつ近づくにつれ……参列者の皆さんからの、温かな拍手が見えてきた。

 拍手は出来るけど、花嫁に声をかけてはいけないマナーらしく……けど、皆さんはとても笑顔だった。


『『『『『おめでとう、イツキ!!』』』』』


 って、声に出していたら……そんな感じが浮かぶくらい。

 私は嬉しくて涙が出そうになったけど……結婚式の最中だから我慢した。

 そして、アーネストさんが待っているところまで、転けないようにゆっくりゆっくり向かうと。


(……ああ、素敵)


 何度か目にしたはずなのに……特別な日であるせいか、騎士服のアーネストさんはとっても素敵でかっこいい。アーネストさんは、凛々しくしていて……ワルシュさんに促されて、私の手を取る仕草ひとつでときめいてしまう。

 けど、感動している暇はないので、私もリハーサル通りに……アーネストさんの手を掴み、前を向くことにした。

 前の祭壇には、とても素敵なおじいさま……教会の最高司祭様が私達に微笑んでいらっしゃった。


「アーネスト=ハインツベルト殿。イツキ=エイペック殿。これより、成婚の儀式を行わせていただく」

「「はい」」


 神父さん以上に、司祭様だなんて日本にいた頃だと海外ウェディングでもあるだろうかと思っていたのに……今、目の前で起きることが信じられない。

 でも……手を握っているアーネストさんの体温は本物だ。シルクのような手触りの手袋越しにも、しっかり伝わって来ている。

 何度か噛みそうになったが……結婚式は参列者の人々にも見守られながら終わりを迎え。

 次は、結婚披露宴パーティーをすることになったのだが。


「……え?」


 何故か、ウェディングケーキが二種類あったのだ。形も大きさも当然違うが、何故か二種類。


「イツキ! こっちは料理人達で、こっちが私達が作ったものよ!」


 リュシアーノ様がそう説明してくださったが、まだ二種類ある意味がよくわからなかった。

 すると、ワルシュさんが礼服を軽く着崩してから答えてくれた。


「そっちはエリオ達が張り切ってな? リュカルド達とのは……まあ、俺が監修した」

「……ケーキをですか?」

「他に思いつかなくてな? まあ、最低ひと口ずつ……あの食べさせ合いしてくれや」

「……はい」


 理由が分かってから、私とアーネストさんとの結婚には……たくさんの人達が祝福してくれているんだな、とさらに嬉しくなった。

 もちろん、ファーストバイトもきちんと行い……味わいはそれぞれ違ったが、口まわりがクリームだらけになるくらい……とても美味しいケーキ達だった。
しおりを挟む
感想 319

あなたにおすすめの小説

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。 if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります) ※こちらの作品カクヨムにも掲載します

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。