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全員のまかない

第13話 料理長のまかない

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 ジェストがアーネストのぼんの実家に呼ばれたらしいが。

 だいたいの予想はつく。あの公爵家の次期当主は、たしか年の差はあれど友人関係だったはず。となれば、イツキのために何か用意すんのに……ジェストに助言を求めたんだろう。通達に詳しく書いてなかったらしいが、おおむねそんなとこのはず。


(出来れば……俺も加わりたかったが)


 王宮の厨房を預かる身としては、責任者二人が居なくなるのはまずい。俺が遠征に出る時はジェストがいるから出来たことだ。そのジェストがいないとなると……まあ、イツキ以外にも任せられる奴はいるが、一応示しがつかん。

 俺が今一番悩んでいることについては、完全に私用だからだ!!


(……イツキに、何をしてやれるんだ?)


 約三年前。

 空から降って来た、イツキを受け止めてから……養女にしてそれくらいの月日が経った。

 飯を作るのが得意でまかない番にしたが……思った以上の成果どころか、国以上に世界を救ってくれた嬢ちゃんだ。アレルギーっつー不治の病はまだ未解明な部分は多いものの、対策は思った以上に難しいもんじゃない。

 食いもんであれば、それを極力口にしなければいい。春先の、花粉症って鼻が酷くなるのも実はアレルギーだとイツキから知らされなきゃ……この世界はもっと酷いことになっていただろう。

 それが穏やかなことになってきたのだから……ほんと、イツキ様様だ。

 だからこそ……俺も無事に結婚出来たのだから、養女の結婚にも何かしてやりたいと思ってはいる。

 厨房一同では、エリオの提案で決まったが……一応、親としては何をすべきか、うだうだ悩んでいた。その顔を見られるたびに、部下連中には『ひっ!?』と怯えさせてしまってるが。


「先輩~」

「ワルシュ料理長、ご相談が」


 とにかく、今日も悩んでいると……ネルにレクサスのぼんが俺んとこに来たんだ。


「……よぉ」

「……先輩。サーシャ先輩にもその顔見せん方がええで?」

悪魔デーモンも逃げ出すくらいですよ?」

「うっせぇ。なんの相談だ?」


 用件を聞こうと息を吐けば、ネルが人差し指を立てた。


「イツキとアーネストの結婚へのお祝いですよ」

「……お前さんらも悩んでいるのか?」

「そりゃなぁ?」

「リュシアーノ様は、王妃殿下ともご一緒に考えられることになったので。僕は僕と言うことになり、レクサスも悩んでいたので……」

「で、俺のとこにか?」

「どうやら、ワルシュ料理長もお悩みのご様子だと」


 部下に聞いたとしたら……エリオと仲が良い、あの背が結構伸びてきた坊主あたりか?

 別に隠している訳ではないが……こいつらにも知られたとはな。


「俺も見た通りだ。それか、なんか提案でもあるのか?」

「ええ、ひとつ。と言うよりも……料理長なら、先に動いていると思いましたが」

「は?」

「ケーキや、先輩! 先輩ん時にイツキはんが作ってくれた、あのでっかいケーキ!! 自分らも手伝うんで作りやせん?」

「……あ」


 なんで、自分にしてもらっていた事をすっかり忘れていたんだ!!? 部下の奴らも、同じものを作らせたと言うのに!?

 思わず、執務用の机に拳を強く叩きつけて……半壊するくらいの事をしてしまったが。


「……料理長」

「…………先輩、時々抜けとるからなあ」

「うるせぇ! 一度リュカルドに確認しにいくぞ!?」

「何故です?」

「せやで?」

「リュカルドも考えておかしくねぇ……」


 なので、二人を伴って、あいつの執務室に行くことにした!!
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