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騎士のまかない㉕

第1話 先を越された

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 意外過ぎる奴から、意外過ぎる議題を持ちかけられた。


「隊長、副隊長!! 自分……サフィアと結婚させていただきます!!」


 部下であり、第一部隊隊長のレクサス=バーミィが……とうとう結婚と言う言葉を口にしたのだ。


「ほう? サフィア嬢と、ですか? 詳しいわけを聞いても?」

「……もちろんです」


 レクサスの説明によると。

 もともと、殿下の第一メイドの地位で伯爵家の末姫でいたサフィア殿だったが。

 本人の意思と、王家側の推薦もあり……殿下が学園に行かれる際の側仕えのメイドに、行くことが決定したのだ。

 しかし……暮れの、イツキと俺の誕生日パーティーの際、結婚をしようと言う約束はしていた。それをどうしようか悩んでいた時に……イツキと妃殿下の提案で、妃殿下が作られた菓子と共に、打ち合わせが完了したため、結婚を先にすることとなったそうだ。

 またもや、イツキが事態を解決したと言うことか。


「なるほど。既婚者であれば、多少の牽制が出来る。……その結論に至り、婚礼をすると言うことですね?」

「そうですー。で、ええですか?」

「もちろんですとも」


 隊長としては、メイドの主人である殿下と婚約されているからな……。その殿下の身近な人間に何かある方がお嫌だろう。もちろん、サフィア殿を心配される気持ちもあるだろうが。


「何はともあれ……おめでとう」

「あざまっす!」


 俺とイツキがまだなのに!

 先を越されたのは悔しいがな!?


「となると。レクサスが決定したと言うことは……アーネスト? 君とイツキはいいのですか?」


 悔しがっていると、今度は矛先が俺に向いた!?


「……何故、でしょう?」

「何故ではありません。ある意味、レクサスより気軽に結婚出来る君達ですよ? 養父のワルシュ料理長もご結婚されたんですから、別に文句はないはずです」

「せやな~?」

「……た、しかに」


 一夜を過ごした時から……何度か、そう言う関係を結びはしたが。

 肝心の結婚の言葉は……指輪を渡した一年以上前から口にしていないような?

 迂闊だった!!


「……こりゃ、忘れてた可能性に一票」

「僕も一票です。勢いで言うのはイツキに失礼ですが……そろそろいいはずです。きちんと申し込むべきですよ?」

「……………………はい」


 いつ言うべきか?

 雰囲気重視?

 時と場所?

 どこから……優先していいのか、悩みに悩んでしまい。

 執務に手がつかず、隊長からはまたコンコンと説教される羽目になってしまった。


「そのように考え込むのは、君の悪い癖ですよ?」

「……すぐに、言うべきでしょうか」

「君には最大のチャンスがあるじゃないですか?」

「……まかない、ですか?」

「ええ」


 やはり……そのタイミングなのだろうか?
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