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王妃のまかない⑩
第1話 その決定をどうすべきか
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娘のためとは言え……あの子には酷だったかしら?
側仕えのメイドにと、リュシアが大きくなってからずっといる子に選んだのだけど。
どうやら……そのメイドであるサフィアが、最近婚約したことを知らなかった。
「遠慮せずに、言ってくれてよかったのよ?」
「いえ。それは……」
今私は、サフィアを呼んでふたりだけで話し合っている。陛下を加えると色々こじれるだろうからとの配慮だけど……余計に緊張させたのか、サフィアの顔は強張っていた。
「…………あの子が幼い頃から、今まで献身的に仕えてくれたのは嬉しいわ。でも、自分の幸せをちゃんと考えてもよくてよ?」
「……ですが」
きっと……自分以上のメイドがリュシアと共に学園に行ったら行ったで、結婚した後に色々後悔するかもしれない。それを言いにくくて、不安な顔をしているのだろう。成人したてだから、表情がわかりにくくてもこの子は……まだまだ私とかにとっては子供だものね?
「悪いわけでもない。でも、自分で落ち込むのも良くないわ。……結婚は将来の大事だもの。レクサスには、学園の同行については知らせたのかしら?」
「……はい」
「……あなたよりも落ち込んでた?」
「……………………はい」
レクサスは必要以上に感情が出る人だから、落ち込み度合いは簡単に想像が出来るわ。
変更はきくでしょうけど……さっきも思ったが、それだと責任感の強いサフィアの方が落ち込むかもしれない。
それか……いっそ、婚姻を結んだ上で送り届けるか?
そうすると、下手に手出しをしようとする輩も出にくいか。サフィアは『氷の美女』と呼び名がつくくらい、美しい顔立ちだもの。歳下の男子生徒が手出ししないとも言い切れないから。
(……うーん。勅命で言うのは簡単でも)
それが本人達の幸せに繋がると言うとわからない。
サフィアには、一度決定を仮にするとだけ告げて退室させ、今度呼んだのは。
「……悩むところですね?」
アーネストと婚約しているイツキである。
別のメイドにお茶を入れさせたのを、丁寧に飲む姿は貴族ほどではないが美しく見えた。
「私もうっかりしていたわ。リュシアが一番気を許しているメイドがサフィアだから」
「それはわかります。サフィアさんは優秀なメイドさんですが、レクサスさんとお付き合いされたことでさらに素晴らしい方となりましたし」
「……そうなの。だから、サフィアがいいと思って」
やっぱり、イツキに相談して正解だった。
私のもやもやした思いをきちんと理解してくれているもの。
「けど、サフィアさんご自身もお受けしたいか迷っていらっしゃるのですよね?」
「ええ。今日の様子だと『行きたい』だけど。レクサスからプロポーズされたから『迷ってる』もあって」
「で、ヘルミーナさんとしては、結婚させた上で送りたいと?」
「そうなの。イツキだったら、どう思う?」
「……うーん。新婚ほやほやで、いきなり単身者になるのは酷かと」
「……ああ……」
私の考えは、やはり愚かだったわ。似た状況でいるイツキがこのように答えるのだもの。
どうすれば!
側仕えのメイドにと、リュシアが大きくなってからずっといる子に選んだのだけど。
どうやら……そのメイドであるサフィアが、最近婚約したことを知らなかった。
「遠慮せずに、言ってくれてよかったのよ?」
「いえ。それは……」
今私は、サフィアを呼んでふたりだけで話し合っている。陛下を加えると色々こじれるだろうからとの配慮だけど……余計に緊張させたのか、サフィアの顔は強張っていた。
「…………あの子が幼い頃から、今まで献身的に仕えてくれたのは嬉しいわ。でも、自分の幸せをちゃんと考えてもよくてよ?」
「……ですが」
きっと……自分以上のメイドがリュシアと共に学園に行ったら行ったで、結婚した後に色々後悔するかもしれない。それを言いにくくて、不安な顔をしているのだろう。成人したてだから、表情がわかりにくくてもこの子は……まだまだ私とかにとっては子供だものね?
「悪いわけでもない。でも、自分で落ち込むのも良くないわ。……結婚は将来の大事だもの。レクサスには、学園の同行については知らせたのかしら?」
「……はい」
「……あなたよりも落ち込んでた?」
「……………………はい」
レクサスは必要以上に感情が出る人だから、落ち込み度合いは簡単に想像が出来るわ。
変更はきくでしょうけど……さっきも思ったが、それだと責任感の強いサフィアの方が落ち込むかもしれない。
それか……いっそ、婚姻を結んだ上で送り届けるか?
そうすると、下手に手出しをしようとする輩も出にくいか。サフィアは『氷の美女』と呼び名がつくくらい、美しい顔立ちだもの。歳下の男子生徒が手出ししないとも言い切れないから。
(……うーん。勅命で言うのは簡単でも)
それが本人達の幸せに繋がると言うとわからない。
サフィアには、一度決定を仮にするとだけ告げて退室させ、今度呼んだのは。
「……悩むところですね?」
アーネストと婚約しているイツキである。
別のメイドにお茶を入れさせたのを、丁寧に飲む姿は貴族ほどではないが美しく見えた。
「私もうっかりしていたわ。リュシアが一番気を許しているメイドがサフィアだから」
「それはわかります。サフィアさんは優秀なメイドさんですが、レクサスさんとお付き合いされたことでさらに素晴らしい方となりましたし」
「……そうなの。だから、サフィアがいいと思って」
やっぱり、イツキに相談して正解だった。
私のもやもやした思いをきちんと理解してくれているもの。
「けど、サフィアさんご自身もお受けしたいか迷っていらっしゃるのですよね?」
「ええ。今日の様子だと『行きたい』だけど。レクサスからプロポーズされたから『迷ってる』もあって」
「で、ヘルミーナさんとしては、結婚させた上で送りたいと?」
「そうなの。イツキだったら、どう思う?」
「……うーん。新婚ほやほやで、いきなり単身者になるのは酷かと」
「……ああ……」
私の考えは、やはり愚かだったわ。似た状況でいるイツキがこのように答えるのだもの。
どうすれば!
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