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メイドのまかない⑤

第2話『ワイルドにフライドチキン』

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 まず口に入ったのは……香辛料が効かせてある、柔らかい何か。お肉はそのすぐ下にあったけれど……お肉も口に含んだ時に、表面のものと一緒に歯で噛み切れて……噛み砕くと同時に、香辛料もだが質の良い油が広がっていく!?

 これまで、貴族として実家で口にしてきたものや……フルコースを食べてきたお肉の料理とはまったく違っていた。

 無作法のように、手づかみで口にしたその『フライドチキン』と言う料理は……イツキ殿がイージアス城に来てから、陛下方が食堂を開設して……臣下の者達が口にしてきた料理の中にあったような、コカトリスや他の鳥肉料理とも似ているようで違う。

 ひと口……またひと口、と咀嚼していく楽しさが止められない。やめられない。

 皆様方の前だと言うのに、私はマナーも何もかも無視して……その料理にかぶりついていったのだった。


「お? うんまいやろ?」

「……はい」


 ひとつを綺麗に食べ終えて、ハッとしてナフキンで口を拭ったが……レクサス殿はニンマリと笑っていらっしゃったので、肯定せざるを得ない。

 すると、少し下から『うふふ』と可愛らしい声が聞こえてきた。


「イツキの料理の前では、『氷の美女』もかたなしね?」

「……リュシアーノ、殿下」


 殿下にもだが、陛下方にもバッチリ見られていたのじゃもちろんなので……少し離れたところで『ふふ』と笑う声が聞こえてきたのだ。けれど、どなたも叱るようなことはなかった。


「いいことよ? いい変化だもの」

「……そう、でしょうか?」

「せやで? クールなサフィアもかわええけど、表情豊かになんのもええわ。イツキはんが引き出すんには、ダチやけどちぃっと嫉妬するでー」

「……レクサス殿」


 私が感じていたものを、この方にも感じていらっしゃった??

 私だけじゃなかった?

 そのことに、胸の奥が熱くなってくる……正直言って、嬉しかった。


「ラブラブねぇ? さ、そろそろプレゼント開封といきましょう??」

「そうですなあ?」

「……はい」


 一度、料理を堪能する手を止めて。

 殿下の提案もあり……イツキ殿が用意されていた濡れ布巾でよく手を拭ってから。

 くじで決まった、それぞれの……東方大陸の催し物らしい、『クリスマス』と言う習わしで必要だと用意したプレゼント。

 私は……レクサス殿ではなく、実は陛下のプレゼント。

 小さな小箱だが、一級品の品だとよくわかる質感。

 少し緊張しながら、イツキ殿から受け取ったのだった。


(何が……入っているのだろう?)


 参加者が男女共。

 ほとんどが、王族の方々なので……陛下はご家族にあてたプレゼントでしょうが。

 それでも、当たってしまった今……下賜していただいたものと同じように、緊張しながら……私は包みにあるリボンに手を添えた。
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