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騎士のまかない㉓
第3話『冷え冷えわらび餅』②
しおりを挟む「んん~~!! とっても美味しいです!!」
イツキも気に入ったのか、いつのまにかエマが用意していた『リョクチャ』と一緒にワラビモチを食べていた。
「イツキちゃんのレシピのお陰よん! 最近納品されるのも、わかりやすくて丁寧で……他の納品者とかを断然追い抜く勢いで人気だわよ?」
「そんな……簡単なものしかお伝え出来ていませんが」
「それでいいのよん? 庶民にはありふれたもので十分だわ」
「……そうですね」
とは言え、イツキが知り得る食の知識はどれもが……異界の知識だ。
一生のうちに、奇跡でもない限り……巡り合わなかったこと。
それが現実となり、これまであった食の常識などを一新してくれたのだ。
アレルギー然り、モチの制限なども。
先ほど、このワラビモチを作ってくれたらしい女性……ミランダは、たしか身籠もっているためにモチは食べられないはず。しかし、作るのが楽しいからかもしれない。ちらっと見たが、笑顔でいたしな?
(……しかし……今まで食べたモチとは全然違う)
もう一度食べるが、スルッと口の中に入り……絡めたソースに大豆の粉と組み合わせれば、くにくにした歯応えが面白い。
喉から胃に通って行く感覚が……一種の快感とも言えようか? とても清々しくも思えるのだ。これは……モチ料理を殊更気に入られている王妃殿下には、また気に入られる逸品となるだろう。
「このお餅は出来立てを黒蜜……ソースと合わせるのも美味しいんですよね」
堪能している最中に、イツキがまたとんでもないことを言い出した!?
「なんですって!!? レシピには冷やした方が良いって書いてたじゃない!?」
「あ、いえ。私も具体的な作り方は……地方によってはあるのを思い出しただけで」
「……わかんないのぉん?」
「すみません。力不足で」
イツキにも出来ることと出来ないことがある。
家庭料理という割には、凝った料理の作れるのだが……イツキのいた世界の……出身国は特に、食にあふれていると言っていた。
二度と帰れるかはわからない。
しかし……俺と婚姻すると約束してくれたのだから、もう帰るつもりはないらしい。
嬉しくもあったが、複雑な気分にもなった。
なので、最後のひとつを食べようとしたら……いきなり、イツキが手を叩いた!
「ど、どうしたのん?」
「エマさん。緑茶があるのなら……お抹茶はありますか?」
「オマッチャ?」
「緑茶を粉末状にしたものです」
「…………ちょっと確認するわん」
と言って、下に行ったがすぐに戻ってきてくれて。
小さな筒にだが、薬で扱うような緑の粉が入っていた。
「これで、抹茶わらび餅が作れます!!」
イツキのやる気に火がついたようだが。
ほとぼりが冷めるまで、外に出れないので仕方がないかと俺は苦笑いするしかなかった。
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