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冒険者のまかない⑨

第4話『オトンのチキン南蛮』

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 まあ、そんなうんまいチキンナンバンを先に食ったせいもあって。


(……悪くはない。悪くはないんやけど!!)


 パサパサはしとらんが、イツキはんのうんまいチキンナンバンを先に食ったせいもあり……どうも物足りなく思ってしまう。

 オカンが言うように、酒に合うのもよーわかる。

 だ・け・ど!!


「「…………」」


 サフィアも、イツキはんの料理をちょいちょい口にしているから、オトンのチキンナンバンが物足りない感じの顔つきやったわ。

 当然、真正面にいたオトン達は慌ててしまってん。


「ど、どうしたのですか?」

「まずくないけど……なんかおかしかったん??」

「いや……オトンらが悪いんちゃう」


 サフィアと向かい合い、正直にレシピ提案者のイツキはんの料理がどれだけ美味いかを……詳しく説明すると。

 オトンらも、自分らが悪くないと言う事実に、ほっとした表情になってくれたわ。


「……そうですか。そのイツキさんはそれだけ料理上手なんですね?」

「先輩以上かもしれへん、特級料理人やからなあ。無理ない」

「せやけど……ずるいわ~!! あんたら、そのイツキちゃん言う子の料理。毎日のように食えてるん?」

「せやで。サフィアにもわかりやすぅ教えてくれるんや!」

「は、はい」


 以前、愛友あいゆうさいん時に作ってもろた……あのチョコレートクッキー。

 実は、もう一度作り直してくれたんやけど……めちゃくちゃ、自分のしでかしたことを後悔したわ。自分が急がなきゃ、サフィアが涙を見せることもなかったし……もっと穏便に事が進んだ。

 まあ、あれはあれでいい思い出にもなったけどなあ?


「……せや」

「あかんで、オカン!」

「まだ何も言うとらんやろ!?」


 オカンが提案する前に、自分は言わせないようにした。今の流れで何言い出すかは、息子やなくてもわかるわ!!


「はっはっは。僕もイツキさんの料理に興味はありますが……お忙しいようですし、市民でしかない僕らがお城に行くわけには行きませんよ?」

「せやかて、キースぅ。うんまい料理をこのアホんだらが毎日のように口にしとるんやで?」

「そこは僕らの息子くんが立派に務めている上でのことですし」

「お、おん」


 さ、サフィアと付き合うようになってからは……真面目に取り組むようにしとる。昼寝も時々するけど……以前よりは、減ったはずや。

 ほえほえポワンなオトンでも、中は真っ黒やからほんま怖いわ。せやから、荒くれ者で有名やったオカンを女房に出来たわけで。

 とりあえず、顔合わせについてはサフィアのうんまい紅茶で締めくくる事が出来。

 生産ギルドには、まだまだイツキはんのレシピの需要と制作ミスが多いことを確認しておいた。イツキはんに、もう少しレシピのコツを書いてもらおうと、城に帰ってから伝えるためや。
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