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料理長のまかない⑥
第4話『プリンじゃない茶碗蒸し』
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留守をジェストに任せていたので、食堂などの運営は文句無しに稼働していたようだ。
ギンナンを持ち帰り……イツキの言う蒸し物『チャワン蒸し』と言う料理を作るのに、分担して取り掛かる。
イツキはギンナン。
俺は、卵液を作る。……これが面倒で、卵を金属製のザルで何回かこさねぇといけない。口当たりの良いプリンのようなもんになるんだと。ますます想像しにくい。
「はい、白だしです」
「おう」
イツキ特製の、メンツユじゃない白っぽいダシ。スープの素とは違う、イツキ特製の『ワフウ』の食材。
厨房でその秘密を知っているのは……俺だけだ。副料理長とは言え、ジェストにも言い難い。異世界からの渡航者と言う事実もだ。
「卵と混ぜて、もう一度こしたら……私が作った、この器に入れてください」
「……こりゃあ?」
師匠が管理室に放置していた……ある意味ガラクタの食器にあったやつ。少し厚みがあるが……スープの器にしては深い。コップにするには小さい。そんな器の中に、イツキは殻を剥いたギンナンとか……コカトリスの肉。あと、茹でたエビとか?
「美味しい美味しい茶碗蒸しになります!」
「……お前さんがそこまで言うなら」
言われたように、卵液を入れる。あぶくが出来た部分は……生活魔法の種火で炙るようにして消した。それを銀紙で上を覆い……蒸し器に並べて行く。
蒸し終えたら、串を軽く刺して火の通り具合を見ていた。濁った卵液が出なれば良いそうだ。
「お待たせ致しました! 茶碗蒸しです!!」
「さっきから言ってるが……その『チャワン』ってなんなんだ?」
「…………日本では、米などを入れる器もですが。お茶を入れる器のことを、お茶碗って言うんです」
「なるほど」
小声で教えてくれたので、納得が出来た。米は冷めやすいが食堂で提供している時は……普通に皿に軽く盛り付けているだけだ。
イツキや師匠のように、『ハシ』を扱える人間には少し深くて持ちやすい器がいいらしい。フォークでも扱えなくないので、あとでイツキと管理室で探すかと決めた。
ところで、メインの茶碗蒸しだが。
(……マジでプリンみてぇだ)
だが、甘味は一切って具合に入れていない。完全にイツキの白だしだけだ……。どんな味なのか、白だしは口にしたことがあるので想像はつく。熱いから気をつけて……とイツキに渡された茶碗蒸しは、たしかに熱い。
出来立てを食えるとは……アーネストの坊以外だと、料理人である俺らの特権だ。
スプーンですくえば、ぷるんと震える卵の部分がとれて……湯気が立った。ふんわりと優しいダシの匂いに釣られ、俺は迷わず口にした。
「ほふ!?」
予想以上に熱かった!?
火傷……まではなかったが、やってきた塩気と味の濃さ……なめらかな卵の火加減。そのすべてが、小さいひと口に凝縮されていた!?
もうひと口、とスプーンですくうと……ギンナンにコカトリスの肉。一緒に食えば、もう『プリンじゃない』と断定出来たくらいだ!!
「めっちゃうめぇ!? 熱いが……それが逆に良い!! なんつーか、少し固いオジヤみてぇだなあ?」
「味付けの組み合わせとしては、似ていますしね?」
イツキも食っていたのか、美味そうに顔を綻ばせていた。
「こりゃぁ……具材も色々出来そうだな?」
「そうですね? 苦手な人がいなければ……干しキノコを戻したものとか。エビは料理長がアレルギーではないので入れてみたんですが」
「あー……エビはちょいちょいいたなあ?」
「なので、鶏肉も一緒に入れてみました」
キノコも苦手な連中が少しくらいいる。
たしか、アーネストもだが……レクサスの坊もだったなあ?
レクサスの方も、色々ガキだったが……イツキとダチになれて、婚約者も出来たことで変われた。
(俺も結婚出来たきっかけがイツキだからなあ?)
あん時、空から降ってきたこの嬢ちゃんは……本当に最高な俺の養女になったもんだ。
ちなみに、チャワン蒸しは寒い時期だけでなく……夏にも良いらしい。それもまた、違う具材で作るのが楽しみだった。
ギンナンを持ち帰り……イツキの言う蒸し物『チャワン蒸し』と言う料理を作るのに、分担して取り掛かる。
イツキはギンナン。
俺は、卵液を作る。……これが面倒で、卵を金属製のザルで何回かこさねぇといけない。口当たりの良いプリンのようなもんになるんだと。ますます想像しにくい。
「はい、白だしです」
「おう」
イツキ特製の、メンツユじゃない白っぽいダシ。スープの素とは違う、イツキ特製の『ワフウ』の食材。
厨房でその秘密を知っているのは……俺だけだ。副料理長とは言え、ジェストにも言い難い。異世界からの渡航者と言う事実もだ。
「卵と混ぜて、もう一度こしたら……私が作った、この器に入れてください」
「……こりゃあ?」
師匠が管理室に放置していた……ある意味ガラクタの食器にあったやつ。少し厚みがあるが……スープの器にしては深い。コップにするには小さい。そんな器の中に、イツキは殻を剥いたギンナンとか……コカトリスの肉。あと、茹でたエビとか?
「美味しい美味しい茶碗蒸しになります!」
「……お前さんがそこまで言うなら」
言われたように、卵液を入れる。あぶくが出来た部分は……生活魔法の種火で炙るようにして消した。それを銀紙で上を覆い……蒸し器に並べて行く。
蒸し終えたら、串を軽く刺して火の通り具合を見ていた。濁った卵液が出なれば良いそうだ。
「お待たせ致しました! 茶碗蒸しです!!」
「さっきから言ってるが……その『チャワン』ってなんなんだ?」
「…………日本では、米などを入れる器もですが。お茶を入れる器のことを、お茶碗って言うんです」
「なるほど」
小声で教えてくれたので、納得が出来た。米は冷めやすいが食堂で提供している時は……普通に皿に軽く盛り付けているだけだ。
イツキや師匠のように、『ハシ』を扱える人間には少し深くて持ちやすい器がいいらしい。フォークでも扱えなくないので、あとでイツキと管理室で探すかと決めた。
ところで、メインの茶碗蒸しだが。
(……マジでプリンみてぇだ)
だが、甘味は一切って具合に入れていない。完全にイツキの白だしだけだ……。どんな味なのか、白だしは口にしたことがあるので想像はつく。熱いから気をつけて……とイツキに渡された茶碗蒸しは、たしかに熱い。
出来立てを食えるとは……アーネストの坊以外だと、料理人である俺らの特権だ。
スプーンですくえば、ぷるんと震える卵の部分がとれて……湯気が立った。ふんわりと優しいダシの匂いに釣られ、俺は迷わず口にした。
「ほふ!?」
予想以上に熱かった!?
火傷……まではなかったが、やってきた塩気と味の濃さ……なめらかな卵の火加減。そのすべてが、小さいひと口に凝縮されていた!?
もうひと口、とスプーンですくうと……ギンナンにコカトリスの肉。一緒に食えば、もう『プリンじゃない』と断定出来たくらいだ!!
「めっちゃうめぇ!? 熱いが……それが逆に良い!! なんつーか、少し固いオジヤみてぇだなあ?」
「味付けの組み合わせとしては、似ていますしね?」
イツキも食っていたのか、美味そうに顔を綻ばせていた。
「こりゃぁ……具材も色々出来そうだな?」
「そうですね? 苦手な人がいなければ……干しキノコを戻したものとか。エビは料理長がアレルギーではないので入れてみたんですが」
「あー……エビはちょいちょいいたなあ?」
「なので、鶏肉も一緒に入れてみました」
キノコも苦手な連中が少しくらいいる。
たしか、アーネストもだが……レクサスの坊もだったなあ?
レクサスの方も、色々ガキだったが……イツキとダチになれて、婚約者も出来たことで変われた。
(俺も結婚出来たきっかけがイツキだからなあ?)
あん時、空から降ってきたこの嬢ちゃんは……本当に最高な俺の養女になったもんだ。
ちなみに、チャワン蒸しは寒い時期だけでなく……夏にも良いらしい。それもまた、違う具材で作るのが楽しみだった。
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