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王女のまかない⑨

第2話 秋の味覚狩り②

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 しかし、栗拾いにしても……日本で言うなら、まだ秋でも真ん中の季節。

 イツキの提案もあったために、この時期に栗拾いをすることになったのよね?


『栗は、私のお母さんから聞いた美味しい食べ方ですが……だいたい一ヶ月は冷蔵庫で保存しておくと、焼き栗にしても甘くなる具合が採れたてと違うんです』

『新鮮な方が美味しいんじゃないのね?』

『はい。自然に落ちたイガから収穫しても……さらに冷暗所で熟成すると旨みなどが違うらしいので』

『それで……栗のモンブランを』

『はい。せっかくなので、作ってみようかと』


 と言うことで、収穫を早いこと済ませるためにネル達にも話を持ちかけたのよね?

 その時、ネルが。


『時間……を操作すれば、早い段階でも美味しく出来るかもしれません』

『!? そんな凄い魔法……ネルは出来るの!?』

『ええ。多少操作に手間はかかりますが……何とか』

『お願い!』


 時間操作って、漫画やラノベとかに想像として書かれることが多い……現実ではあり得ない魔法なのに。

 私の婚約者、すっごぉい!!

 ほんと、尊敬しちゃうわ。ただ、なんのために覚えたのかを聞いた時ははぐらかされたけども。


「僕がイガをブーツで支えますので、リュシアーノ様はテンラを」

「ええ」


 呼び名は日本とかと違うけど、ちゃんとした茶色くて固い殻のような皮に覆われた……栗があったので、一緒に持ってきた火バサミでしっかりと掴む。

 それを、ネルが腰につけていた布袋の中に入れていく。

 イツキ達も似た感じで栗拾いを始めていたので、どんどん収穫していったわ。


「リュシアーノ様ー、ネルヴィスさーん! 休憩にしましょう!!」


 ネルの亜空間収納で、三袋くらい収穫していたら……イツキから休もうと言ってくれたわ。たしかに、夢中で収穫していたもので休憩をすっかり忘れていた。


「……美味しい」


 アーネストの亜空間収納に入れておいた、冷たい紅茶で口の中がさっぱりしていく。普通の紅茶じゃなくて、少しレモンが効いているレモンティーだから余計に喉が潤うわ。


「どのくらい収穫出来ましたか?」

「僕らは布袋、三つ分ですね」

「私達は五袋ですね? 休憩終わったら、帰りますか?」

「あら、イツキ? もう作るの??」

「いえ。時間を操作する魔法を使っていただいても……鬼皮剥きとか、グラッセの仕込みは結構大変なんですよ」

「俺も手伝おうか?」

「ありがとうございます。けど、手に怪我をしたら大変ですし」

「それは君も同じだろう?」

「じゃあ!」


 ふたりの間に、私は手を上げて割り込んだわ。


「殿下?」

「「リュシアーノ様??」」

「せっかくだから、皆でやりましょうよ!!」

「「「えええ!!?」」」


 そこまで……皆して驚かないでほしいわ。

 私も食べるんだから、除け者扱いは嫌だもの!!
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