上 下
300 / 782
王妃のまかない⑧

第4話『お餅で豆大福』②

しおりを挟む
 モチ尽くしだけど、嬉しくないわけがない!!

 陛下や娘の前だけど……一年近くも待った、あのモチの味わいを思い出すとがっつきたくなってしまう。

 しかし、メイドや執事バトラー達も控えているのでそんなはしたないことは出来ないわ。

 だから、そっと持ち上げると……ピーチモチの時に感じたような、ずっしりとした重みと柔らかな感触に……もうダメ! と、かじりついたわ!!


「……ああ」


 これよ。

 出来立てのモチなども、もちろんとても美味しかったけれど……ちょっとフワッとして、モチモチしていて……内側のアンコの部分との調和が素晴らしい味わい。

 今回は、黒豆ブラウを甘くしたものも入れているせいか、さらに甘い味わいはしたけど……ほんの少し塩気を感じた。

 けれど、それがかえって、素晴らしさを増幅しているわ。ずっと甘いのだと舌が疲れるのに……絶妙な舌休めの役割を担っている。

 ひと口……またひと口と食べ進めていくのが、本当に楽しい!!


「ふふ。お母様、すごい食べてる!!」


 リュシアーノも食べていたけど……食べ終わるのは私の方が早かったわ。ああ、年甲斐もなく……食べ物にがっついてしまった。

 しかし、このダイフクは素晴らし過ぎるもの!!


「イツキ……もう一個」

「…………小さめのなら」


 我慢出来ずに言うと、やはりまだ完全に解禁ではないので……本当に小さめのダイフクしかおかわりをもらえなかったわ。


「やはり、ヘルミーナにもだが乳やりをする女性には……モチやダンゴなどはいきなり口にしてはいけないのか?」


 私が味わって食べていると、陛下がイツキに質問をされていたわ。


「そうですね。個人差はあれど……ヘルミーナ様は母乳の出がお餅とかを食べると出やすいらしいので……いきなり増やすと、お胸が腫れ上がる可能性は高いです」

「……あら」


 たしかに、イツキに少しだけ今日のとは違うモチのお菓子を食べさせてもらった次の日……時間を置くと、乳の出は良かった。

 その具合を見て、イツキは私に色んな料理を振る舞ってくれたけれど……まだまだ乳の出る私だと、しょっちゅうはモチ料理を食べられない。

 悲しいけど、仕方がないわ。


「しっかし、あれか? モチは喉にも詰めやすいようだしな?」

「勢いよく食べると……ご老年の方だと窒息死する事例もあるんです」

「……そうか」


 私はまだまだ若いけれど、娘や息子の将来は国母として見守りたいから……気をつけようと、しっかり噛んで味わってから飲み込んだわ!!

 そして……二日後。

 腫れるまではいかなかったけれど、かなり胸が張ってしまい……ジェラルドにたっぷり乳を上げられる程効果が凄かったわ……!!
しおりを挟む
感想 319

あなたにおすすめの小説

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。