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王妃のまかない⑧

第2話『出来立ての餅』

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 イツキからは、試作をいくつかしたいと言うことで……その日には食べさせてもらえなかったけれど。

 少し、日を置いたが……離宮でやりたいことがあると通達があり、私もだけど陛下やリュシアも呼んで披露してくれることになったわ。


「なぁに!? これ!!」


 リュシアーノが驚くのも無理がないわ。

 石で出来た……大きな器のようなものに、木の台。

 それに、持ち手が細い木槌? のようなものも……これで、何をするのかしら??


「ワルシュ、なにをするんだ??」


 陛下がワルシュ先輩に聞くと、先輩は悪人面を少し緩ませていた。


「イツキの提案だが……もち米ライシを使って、ちゃんとしたモチを作るための道具だ。急拵えだが、生産ギルドに説明して作ったやつだぜ」

「叩く……のか?」

「つく、んですよ陛下」


 別の調理台で副料理長のジェストと共に、何かの準備をしているイツキが声を上げた。


「つく??」

「見た目は叩く工程で間違っていないんですが、お餅はつくと言うんです」

「ふむ」


 で、ジェストと用意していた……リーゾのようにも見える、多分もち米ライシを石の器の中に入れて……イツキは、水かお湯を入れた桶の前に屈んで。先輩が木槌のようなものを持ち上げて、先端部でもち米ライシをほぐしていく。


「せーの!!」


 そして……先輩が大きく木槌を振り上げて、もち米ライシを叩いた!

 その後に、イツキが濡らした手で……熱いはずのもち米ライシをまとめてひっくり返す。

 それを、何度も何度も繰り返していくと!!


「……あら」


 粒々していたもち米ライシが、どんどん滑らかな感じになっていき……少し見覚えのある見た目になっていく。しかも、先輩が木槌を上げるごとに……みょーんって伸びていくわ!!

 あれが……本物の『モチ』??

 ピーチモチとかとは全然違うわ!!


「せい!」

「はい!」

「せいや!」

「はい!!」


 それに……先輩達がモチを作っていくのが楽しそうに見えた。重労働でしょうに、輝かんばかりの笑顔……先輩の悪人面も緩むくらいだもの、絶対モチの方も美味しいに違いないわ。


「っしゃ! こんくらいか??」


 先輩がモチの出来具合を確認してから……何故か私達にこちらに来るように手招きしてきたわ。


「どうした?」

「出来立てのモチは、居合わせたもんの特権だ。ちょっと手出せ」

「こうか?」


 私はジェラルドを抱えたままだったので、メイドのひとりに預けてから手を出したわ。

 少し熱いが……出来立ての、出来立てのモチ!!

 なにも味はないようだけど……絶対に美味しいはず!!

 小さく唾を飲み込んでから、気をつけて口に入れてみたわ。
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