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王妃のまかない⑧

第1話 餅解禁か

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 ジェラルドが生まれて一年。

 最近になって、少しずつ乳離れも出来るようになってきた。陛下がイツキと作ってくださった、リーゾのオモユをメインに……本当に少しずつではあるが、ジェラルドが食事をするようになったのだ。

 これは、つまり。


(モチの……解禁が近いわ!!)



 オニマンジュウももちろん美味しいけれど……やはり、私は『モチ』を好んでいた。

 独特の噛み応えに、みょんと伸びる特徴。

 そして、ほんのり甘くて優しい味わい。リュシアがイツキと作ってくれたレモンモチから……私はもう虜になってしまっているのだ。

 時々……本当に時々ではあるけど、イツキに頼んで少量は作ってもらっていたわ。でも、それもそろそろ終わりが近い。

 ジェラルドが、乳離れを出来るようになってきたのなら……堂々と食べられるはず!!

 まだ完全ではないので、また少しずつかもしれないけれど!!


「ヘルミーナ様は、本当にお餅が大好きなんですね?」


 その日、イツキを呼んで『モチ』をまた作ってもらえないかお願いすることにしたの。

 イツキにジェラルドを抱かせてあげたら、ジェラルドは見慣れた女性だからか泣くこともなく、嬉しそうに笑っていたわ。イツキも嬉しいからか、いつも以上に慈愛の微笑みを浮かべていた。


「リュシアとあなたのお陰よ。けど……我慢するのって大変ね?」

「アレルギーと違って、少しの間我慢するだけなので余計にですからね?」

「…………で、お願い出来るかしら?」

「そうですね。今の調子なら、また少しずつ増やすくらいでいけば」

「じゃあ!」

「ふふ。もち米ライシも手に入りやすくなりましたし……もっと凄いお餅もご用意出来るかもしれないです」

「……もっと凄い??」

「今までのお餅の材料は、間違ってはいないのですがある意味『代用品』だったんです」

「……そうなの??」


 紛い物ではないが、あれだけ美味しかったモチが……実は『本物』ではなかったと言うこと?

 なら、『ライシ』って材料が手に入ったのなら……『本物』が食べられるかもしれない。

 私は、自然と口元が綻んでいくのがわかった。


「うまくいけば、甘いもの以外にも食事に取り入れられます」

「前にも言っていたわね?」

「はい。お雑煮もいいですが……お好み焼き、チーズ焼きとか卵と一緒に焼いたり」

「え?」

「お餅は本当に色々使えるんです」


 以前にも聞いたけれど……モチはそんなに色んな料理に加えられるの??

 どれも食べてみたい……食べたいわ!!

 でも、一気に食べたら……まだジェラルドへの乳が完全に終わっていない今だと、イツキの言っていた胸の病になるかもしれない。

 だったら!!


「その……甘いものだと。ピーチモチのようなものはあるのかしら??」

「果物を使ったものがいいですか?」

「そうじゃないのもあるの??」

「そうですね。少し、塩気があるのなら『豆大福』と言うのがあります」

「豆? ダイフクって??」


 どんなものかしら??

 甘いものに塩気を入れるだなんて、想像しにくいけれど……イツキの作るものなら、なんだって美味しいから期待がふくらむわ!!
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