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まかない婦のまかない⑦

第2話 夏の風物詩は食②

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 真四角のスイカが十分冷やすまで待つ間。

 私は、フルーツポンチの材料を用意することにした。

 異世界に缶詰がないと思っていたが、先代の料理長さんが厨房奥に置いていった材料の中にありました。

 パイナップルと、何故かさくらんぼまで。

 みかんはなかったが、オレンジも。

 シロップ漬けとは言え、味とかが大丈夫かと気になったが……味見しても、少し時間が経っても私がお腹を壊さなかったので大丈夫だった。

 なら、とパイナップルを食べやすい大きさにカットして……せっかくだからとりんごもカットして用意したら。次に、メインのスイカを使うことに。


「……種無し?」


 品種改良についてはよくわかっていないが、この世界のスイカの中身は種がなかった。

 日本とかでの真四角スイカはどうだったか、あんまり思い出せないが……とりあえず作ろうと、ボウルからスイカを取り出し、切った上の部分はバットの上に置いておく。

 下の部分は、スプーンで中身をくり抜くのだが……先に少し味見してみた。


「ん~~!!」


 ぬるい時に食べなかったから比較出来ていなかったけど。

 よく冷やしたお陰で、冷たさがよく浸透していて……実の部分はとても甘くてシャクシャクしている。

 これは、観賞用どころかとても美味しいスイカだった。


(……スイカジュースのフルーツポンチは文句ないくらいに美味しく出来るかも)


 なので、重労働ではあるけどスプーンで頑張ってくり抜く作業を進めていく。


「……イツキさん、朝から見てたけど。何してるの??」


 エリオさんが気になったのか、私の後ろから作業を覗き込んできた。


「スイカでデザートを作るんです」

「え、スイカで??」

「よく冷やしたので、このままでも美味しいですよ?」

「冷やして美味しいの?」

「では、ひとつ」


 ちょうどくり抜いていた部分を彼の手の上に載せ、エリオさんは少しの間じーっと見つめていたが……私の言葉を信じて、パクッと口に入れてくださった。


「!? え……あっま!? シャビシャビしてないし、シャクシャクしてて美味しい!!」

「私の故郷では、スイカは冷やす方が多かったんです」

「へー? これはいいかも! これ、まかない??」

「いえ。王女殿下への差し入れに」

「あ~……そっかぁ」

「スイカは多めに仕入れてあるので、また作りますよ?」

「うん!」


 スイカの一部を布でこして、果汁にする。

 それに、原理はわからないが城下町では需要のある炭酸水を用意しておく。

 くり抜いたスイカの中に、カットしたフルーツ類と果汁に砂糖を混ぜたものを炭酸水で割って。

 仕上げに冷却魔法でキンキンに冷やしたら……フルーツポンチの完成だ。

 ひと口だけスプーンで味見すると、ちゃんとしたスイカ味のフルーツポンチが出来ていた!


(これで、料理長達がかき氷の氷をなんとかしてくだされば)


 夏の風物詩が出来るわけです。
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