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料理長のまかない⑤

第3話『ふるふるスフレパンケーキ』

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「そのまま焼いちゃダメなの~??」

「それでも良いらしいが、これ使うと面白ぇんだよ」


 薄くバターを塗ったフライパンに、型を四つ置いて……生地を流し入れる。

 ここからが慎重なので、待ってる間にハンバーグの方を焼いちまう。


「シューくぅん、これだけでお腹空くよぉ」

「我慢しろって。絶ってぇ、美味いもん出すから」

「シューくんの腕は信用してるけどぉ」


 まあ確かに。

 肉の焼ける匂いは、野営が多いサーシャにはたまったもんじゃない。おまけに、胡椒とかの香辛料の匂いもあるから……余計に腹が減るんだろうな?

 俺も空いてはいるが、我慢は我慢。

 少しフライパンが熱くなってきたら……パンケーキの方には少量の水を入れて蓋をする。こうすることで、分厚い生地の内側を蒸し焼き出来んだと。


「水が消えたら、もう一回水入れて蒸して」


 蓋を開けたらひっくり返す。底のない部分が、サーシャの作ったホットケーキよりは淡いが綺麗な茶色の表面に焼けていた。


「まだ~?」

「もうちょい待てって」


 もう片面がだいたい焼けたな、とターナーで確認してから……イツキに何度か教わった、木ではなくボーンで出来た串で生地を刺す。

 抵抗感がなく、スッと通り……抜いても生地が生焼けしてなくてついてこなきゃ、完成だ。ちょうどハンバーグのいい感じに焼けた。

 待てないサーシャに早く食べてもらえるように、ソースや他の付け合わせなども出来たら!


「おお!」


 サーシャも驚くぐらいの、我ながらいい出来栄えとなったハンバーグパンケーキのプレートとやらが出来上がった。


「んじゃ、食おうぜ?」

「ふるふるしてる!? しっかり焼いてあるとこ見たのに、クリームとかみたい!!」

「そのままでもいいが、ソースつけて食ってみろ?」

「うん!」


 俺が勧めれば、すぐにふるふると震えていたパンケーキをナイフとフォークで切り分け……ハンバーグのソースをつけて口に入れれば肩を震わせた。


「どーだ?」

「溶けちゃった!? けど、ちゃんとケーキの味もするし……美味しい!!」


 そっからは、お互いに『美味い美味い』と言いながら……皿を舐めたかと思うくらいに綺麗にパンケーキを食べた。

 まだ材料もあったんで、若い連中に負けんくらい食う俺達は……ハンバーグもそれぞれ三つ。パンケーキ……イツキが言うには『スフレ』らしいが……も六つくらい食べて、腹がはち切れそうになった。

 肉にもだが、ケーキでこれだけ腹が膨れるとは。


「明日楽しみだねぇ?」

「……ああ」


 こいつの笑顔を見ると、今まで結婚しなかったのを……少し申し訳なく思った。

 だが、多少マシにはなっても、まだ全面的に料理は任せられねぇ!!
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