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隊長のまかない⑦

第2話 仮面の下

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「あ~~疲れた!!」


 馬車に乗ってから、リュシアーノ様は少しだけ姿勢を崩されました。と言っても、少し背中を丸めた程度ですが。


「お疲れ様でした」

「将来のお義父さんになるからって……あそこまでかしこまられるのは、やっぱり疲れるわ」

「ふふ。いずれ変わりますよ」


 リュシアーノ様が学園に行かれて……僕と婚礼を上げていい年頃になるまでには、きっと。

 あと一年と少しで、学園に行かれる年になりますが……今の生活も大事にしていきたいです。ただ、近衛騎士としてリュシアーノ様をお守りしていた時とは違う生活。

 婚約は急ぎ過ぎましたが……この方が実は異世界からの転生者とわかり、日に日に大人びて行く様子を見ると……我慢の限界でしたからね?

 幼女趣味かと、父上達にも心配されましたが……リュシアーノ様だからです。僕は、ずっとずっと……この方だけを愛しく思っていたのですから。


「けど、そうね? ちょっとご飯もらったけど……小腹が空いたわ」

「緊張なされて、いつもよりは控えめでしたからね?」

「私でも緊張するわよ?」

「わかっていますとも」


 王女らしく振る舞われていらしても、その仮面の下で盛大に緊張されているのはよくわかりました。おそらくですが、父上もお気づきでしょう。


「ん~~……イツキに頼めば、卵かけご飯作ってもらえるかしら?」

「…………たまごかけごはん?? とは??」


 またもや、異世界では定番の料理なのでしょうか?

 僕が聞き返すと、リュシアーノ様はピンクの瞳を輝かせました。


「文字通り、卵をリーゾ……あったかいご飯にかけて食べるものよ!!」

「……そのご説明ですと、卵を焼いたものを??」

「違うわ、ネル。割った卵にお醤油を入れてかき混ぜたのを……そのまま」

「!? そ、そのまま!!?」


 そんな手抜き料理とも言い難いのを、リュシアーノ様やイツキが好んでいらっしゃる??

 まったく想像が出来ません!!


「大丈夫よ? 新鮮な卵なら生のままでも美味しいわ。火を通すのももちろん美味しいけれど……日本人はね? 魚でもそうだったけど、わりかし生食出来るものはしちゃうの!!」


 そこで力説なされても……僕はなかなか納得出来ませんでした。

 とりあえず、イージアス城に戻ってリュシアーノ様もですが、僕も着替えてから中央厨房に行きました。

 時間も時間だったので、お八つの時間だからか中にはイツキしか居ませんでした。


「あ、お帰りなさい」

「イツキ! お願いしたいものがあるの!!」

「私にですか?」


 本当に、生の卵を使って……リーゾを食べられるのでしょうか?

 僕は不安に思いながらも、リュシアーノ様の後に続きました。
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