256 / 784
騎士のまかない⑯
第4話『海辺でシャケのちゃんちゃん焼き』
しおりを挟む
海辺でしっかり遊んだ後は……風邪を引いては大変だと言うことで、タオルで水気を拭き……簡易的な服にそれぞれ着替えた。
イツキ特製のバーベキュー用のタレを振る舞ってもらえるので、高価な服につくのを防ぐためだ。簡易的でも、市井にとっては高価に変わりないとイツキは以前言っていたが……たしかに、貴族とかの服の生地はどれも高価だ。今まで自覚は無かったが。
「海でバーベキューです!!」
イツキは念のために、自分で持ってきていた料理人用の服を着ていた。多少汚れてはいるが……綺麗に整えてある。イツキが自分で洗濯しているのだろうか?? 婚約者になっても、まだまだ彼女の知らないところは多い。
むしろ、リュシアーノ王女殿下の方がしょっちゅうお茶会をしているので、俺よりも得ている情報は多いだろう。
俺も、まかないの試食係だけでなく、もっとイツキと語り合おうと決めた!!
「イツキさん、こちらで作っているものは? アルミ箔で覆っているようだけれど」
母上が気になって質問したのは、俺も最初に見た時はよくわからなかったものだ。先日、試食させてもらったのでよく覚えている。
「それは、中にシャケの切り身と野菜……味付けに甘辛いソースなどを入れて蒸し焼きにするんです。網や鉄板の上だと作りにくいので」
「そうなの? 良い匂いがするから……早く食べたいわ」
「ふふ。お待ちください。先に網の方で貝やお魚は出来ましたよ!!」
父上と兄上達が、視察の時に自分達で作ったのが美味かったと……今回もふたりが釣りついでに採ってきたのだ。イツキは嬉々として、メイド達が準備してくれた調理場で下準備をしてくれたが。
「「「「わぁ!!」」」」
肉も野菜もある。
以前、離宮で開いたバーベキューよりも一層豪華に見えた。俺や俺の家族が一緒だから……と自惚れてしまいそうになる。
俺も二回目なので、少しは手伝った。アーレン達には大層驚かれたが。
「どうぞ、お召し上がりください」
皿に均一になるように肉や野菜などを盛り付けたイツキは、皆に配ってくれた。俺も受け取ると……肉、野菜、貝などの上に……あの甘辛いタレがかかって美味そうだった。
「イツキさんもね?」
「はい」
父上に言われなければ……多分食べようとはしなかっただろうな? ちょっと苦笑いしながら、彼女は自分の皿にバーベキューを盛り付けた。
そして、父上の合図と共に、バーベキューを口にする。
「「「「「んん~~!!」」」」」」
やはり、このタレは美味い!!
甘辛く、適度な酸味もある。時間をかけて作るソースらしいが、味が良過ぎてフォークを持つ手が止まらない!!
肉、野菜、貝、野菜。
肉や貝もだが、野菜がここまで美味くなるのが……やはり驚きだ。イツキのお陰で、本当に野菜が美味く感じるのが毎回新鮮に感じる。
父上達も……この場にいるのが自分達だけなので、遠慮なく食べ進めていた。……本当に遠慮ないくらいに。
「皆さん、こちらも出来上がりましたよー」
イツキも自分のを食べ終えたのか、アルミ箔に包んでいたものを開けていた。色とりどりの薄切りした野菜に、大ぶりのシャケ。そこに茶色のどろっとしたもの(それはミソだが)。その上に、彼女は別で用意していたバターのかけらを……開いたところに乗せていく。それも用意した人数分のアルミ箔の器に。
溶けていくバターに、俺もだが他の皆も唾を飲み込んだ。
「大変お待たせ致しました。シャケのちゃんちゃん焼きです!!」
「「「「「ちゃんちゃん焼き??」」」」」
「東方大陸の地方料理ですよ」
と、言うのは俺もだがイツキの嘘だが。
イツキが言うには、ニホンの北方地域にある郷土料理らしい。
熱々のそれを皿に乗せて、息を吹きかけてから海辺で食べたそれは。
ふたりで食べた時も美味かったが、皆もいることでまた違った意味で美味く感じた。
イツキ特製のバーベキュー用のタレを振る舞ってもらえるので、高価な服につくのを防ぐためだ。簡易的でも、市井にとっては高価に変わりないとイツキは以前言っていたが……たしかに、貴族とかの服の生地はどれも高価だ。今まで自覚は無かったが。
「海でバーベキューです!!」
イツキは念のために、自分で持ってきていた料理人用の服を着ていた。多少汚れてはいるが……綺麗に整えてある。イツキが自分で洗濯しているのだろうか?? 婚約者になっても、まだまだ彼女の知らないところは多い。
むしろ、リュシアーノ王女殿下の方がしょっちゅうお茶会をしているので、俺よりも得ている情報は多いだろう。
俺も、まかないの試食係だけでなく、もっとイツキと語り合おうと決めた!!
「イツキさん、こちらで作っているものは? アルミ箔で覆っているようだけれど」
母上が気になって質問したのは、俺も最初に見た時はよくわからなかったものだ。先日、試食させてもらったのでよく覚えている。
「それは、中にシャケの切り身と野菜……味付けに甘辛いソースなどを入れて蒸し焼きにするんです。網や鉄板の上だと作りにくいので」
「そうなの? 良い匂いがするから……早く食べたいわ」
「ふふ。お待ちください。先に網の方で貝やお魚は出来ましたよ!!」
父上と兄上達が、視察の時に自分達で作ったのが美味かったと……今回もふたりが釣りついでに採ってきたのだ。イツキは嬉々として、メイド達が準備してくれた調理場で下準備をしてくれたが。
「「「「わぁ!!」」」」
肉も野菜もある。
以前、離宮で開いたバーベキューよりも一層豪華に見えた。俺や俺の家族が一緒だから……と自惚れてしまいそうになる。
俺も二回目なので、少しは手伝った。アーレン達には大層驚かれたが。
「どうぞ、お召し上がりください」
皿に均一になるように肉や野菜などを盛り付けたイツキは、皆に配ってくれた。俺も受け取ると……肉、野菜、貝などの上に……あの甘辛いタレがかかって美味そうだった。
「イツキさんもね?」
「はい」
父上に言われなければ……多分食べようとはしなかっただろうな? ちょっと苦笑いしながら、彼女は自分の皿にバーベキューを盛り付けた。
そして、父上の合図と共に、バーベキューを口にする。
「「「「「んん~~!!」」」」」」
やはり、このタレは美味い!!
甘辛く、適度な酸味もある。時間をかけて作るソースらしいが、味が良過ぎてフォークを持つ手が止まらない!!
肉、野菜、貝、野菜。
肉や貝もだが、野菜がここまで美味くなるのが……やはり驚きだ。イツキのお陰で、本当に野菜が美味く感じるのが毎回新鮮に感じる。
父上達も……この場にいるのが自分達だけなので、遠慮なく食べ進めていた。……本当に遠慮ないくらいに。
「皆さん、こちらも出来上がりましたよー」
イツキも自分のを食べ終えたのか、アルミ箔に包んでいたものを開けていた。色とりどりの薄切りした野菜に、大ぶりのシャケ。そこに茶色のどろっとしたもの(それはミソだが)。その上に、彼女は別で用意していたバターのかけらを……開いたところに乗せていく。それも用意した人数分のアルミ箔の器に。
溶けていくバターに、俺もだが他の皆も唾を飲み込んだ。
「大変お待たせ致しました。シャケのちゃんちゃん焼きです!!」
「「「「「ちゃんちゃん焼き??」」」」」
「東方大陸の地方料理ですよ」
と、言うのは俺もだがイツキの嘘だが。
イツキが言うには、ニホンの北方地域にある郷土料理らしい。
熱々のそれを皿に乗せて、息を吹きかけてから海辺で食べたそれは。
ふたりで食べた時も美味かったが、皆もいることでまた違った意味で美味く感じた。
26
お気に入りに追加
5,495
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。