王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

櫛田こころ

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騎士のまかない⑯

第4話『海辺でシャケのちゃんちゃん焼き』

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 海辺でしっかり遊んだ後は……風邪を引いては大変だと言うことで、タオルで水気を拭き……簡易的な服にそれぞれ着替えた。

 イツキ特製のバーベキュー用のタレを振る舞ってもらえるので、高価な服につくのを防ぐためだ。簡易的でも、市井にとっては高価に変わりないとイツキは以前言っていたが……たしかに、貴族とかの服の生地はどれも高価だ。今まで自覚は無かったが。


「海でバーベキューです!!」


 イツキは念のために、自分で持ってきていた料理人用の服を着ていた。多少汚れてはいるが……綺麗に整えてある。イツキが自分で洗濯しているのだろうか?? 婚約者になっても、まだまだ彼女の知らないところは多い。

 むしろ、リュシアーノ王女殿下の方がしょっちゅうお茶会をしているので、俺よりも得ている情報は多いだろう。

 俺も、まかないの試食係だけでなく、もっとイツキと語り合おうと決めた!!


「イツキさん、こちらで作っているものは? アルミ箔で覆っているようだけれど」


 母上が気になって質問したのは、俺も最初に見た時はよくわからなかったものだ。先日、試食させてもらったのでよく覚えている。


「それは、中にシャケの切り身と野菜……味付けに甘辛いソースなどを入れて蒸し焼きにするんです。網や鉄板の上だと作りにくいので」

「そうなの? 良い匂いがするから……早く食べたいわ」

「ふふ。お待ちください。先に網の方で貝やお魚は出来ましたよ!!」


 父上と兄上達が、視察の時に自分達で作ったのが美味かったと……今回もふたりが釣りついでに採ってきたのだ。イツキは嬉々として、メイド達が準備してくれた調理場で下準備をしてくれたが。


「「「「わぁ!!」」」」


 肉も野菜もある。

 以前、離宮で開いたバーベキューよりも一層豪華に見えた。俺や俺の家族が一緒だから……と自惚れてしまいそうになる。

 俺も二回目なので、少しは手伝った。アーレン達には大層驚かれたが。


「どうぞ、お召し上がりください」


 皿に均一になるように肉や野菜などを盛り付けたイツキは、皆に配ってくれた。俺も受け取ると……肉、野菜、貝などの上に……あの甘辛いタレがかかって美味そうだった。


「イツキさんもね?」

「はい」


 父上に言われなければ……多分食べようとはしなかっただろうな? ちょっと苦笑いしながら、彼女は自分の皿にバーベキューを盛り付けた。

 そして、父上の合図と共に、バーベキューを口にする。


「「「「「んん~~!!」」」」」」


 やはり、このタレは美味い!!

 甘辛く、適度な酸味もある。時間をかけて作るソースらしいが、味が良過ぎてフォークを持つ手が止まらない!!

 肉、野菜、貝、野菜。

 肉や貝もだが、野菜がここまで美味くなるのが……やはり驚きだ。イツキのお陰で、本当に野菜が美味く感じるのが毎回新鮮に感じる。

 父上達も……この場にいるのが自分達だけなので、遠慮なく食べ進めていた。……本当に遠慮ないくらいに。


「皆さん、こちらも出来上がりましたよー」


 イツキも自分のを食べ終えたのか、アルミ箔に包んでいたものを開けていた。色とりどりの薄切りした野菜に、大ぶりのシャケ。そこに茶色のどろっとしたもの(それはミソだが)。その上に、彼女は別で用意していたバターのかけらを……開いたところに乗せていく。それも用意した人数分のアルミ箔の器に。

 溶けていくバターに、俺もだが他の皆も唾を飲み込んだ。


「大変お待たせ致しました。シャケのちゃんちゃん焼きです!!」

「「「「「ちゃんちゃん焼き??」」」」」

「東方大陸の地方料理ですよ」


 と、言うのは俺もだがイツキの嘘だが。

 イツキが言うには、ニホンの北方地域にある郷土料理らしい。

 熱々のそれを皿に乗せて、息を吹きかけてから海辺で食べたそれは。

 ふたりで食べた時も美味かったが、皆もいることでまた違った意味で美味く感じた。
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