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王妃のまかない⑦
第3話『多種多様、ワサビ料理』①
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手配出来たのは、イツキと話してから三日後。
その日は、ジェラルドの乳やりがいつも以上に多かった以外は……ゆったりと過ごせる日だったわ。
サフィアから、イツキがお茶会の時に例の料理を披露してくれると連絡があり。
チャヅケ……と言うのが一番気になったが、オニギリもだけどアボカドもあるのかしら??
仕上げを部屋で披露すると言うことで、即席ではあるが簡易的な調理台を執事達に用意させたわ。
「お待たせ致しました、ヘルミーナ様」
イツキがワゴンを押しつつ、色んな道具や材料を持ってきていた。単純な料理に見えて、実は物凄く面倒な料理では……と今更ながら、申し訳なく思ったわ。
なのに、イツキはにこにこしたまま……用意させた調理台の上に持ってきた道具を置き、さっさと調理を始めていく。
オニギリ。
アボカドは薄く切って。
緑の茶は初めて見るが、熱いそれをスープの器に入れた米の上にかけたりして……薬草に使う魔法素材の根かと思うようなものを、黒い布があるような不思議な板で、ゴリゴリと回しながら擦っていたわ。
それを……米の上に乗せて、仕上げにオコノミヤキで知ったカツオブシをたっぷり乗せて……さらに、仕上げにとショーユを垂らす。
アボカドにも、擦ったもの……緑色のペーストを小皿にショーユと一緒に用意していた。
「……これが『ワサビ』なの??」
夢で思い出した、あの独特の香りがたしかにした。
いい香りで、清涼感を伝えてくるような……ただ、夢で思い出した独特の辛さがあるとなると……すぐに手は出せない。
でも、だけど。
カツオブシが揺れる動きを見ると、どうしても美味しそうに見えたわ。
「お茶漬けのお茶が冷めるといけませんので、よかったらそちらから。上の具材……特にワサビをお茶に溶かして食べてみてください」
なので、言われた通りに……スプーンでお行儀が悪いがワサビを茶に溶かすために混ぜていく。緑色の塊が消えたら、ゆっくりと茶の部分と米。ふやけたカツオブシを持ち上げて、口に入れてみた。
途端、すごくではないが……あの辛味が舌を痺れさせた、けど!?
「あら? 物凄くさっぱりしているわ??」
たしかに、辛味はあったのに……一瞬だけで、すぐに鼻から突き抜けていくような?
私が苦手としているマスタードと似ているようで全然違う。嫌な酸っぱさもないし、辛いが幼い頃に驚いたあの辛味が……今となっては、良いものだと思えるくらい。
それだけ、大人になると食の好みが変わったせいかしら??
「よかったです。次は、こちらのアボカド刺身をどうぞ」
「サシミ??」
「お醤油とワサビなどで食べる料理を言います。以前お話しした、生のお魚の方が多いですが」
フォークで、ショーユにワサビを少し溶かして……薄く切っただけのアボカドに軽くつけて口に入れてみる。辛さはこちらにもあったが、アボカドのまろやかさと合わされば……あの鼻を突き抜ける感覚がちょうど良かった。
以前のフリットを塩で食べるのも美味しかったが、これはこれで物凄く美味しいわ!!
チャヅケよりも好みで……あっという間に、お皿にあったアボカドを空にしてしまうほどに。
その日は、ジェラルドの乳やりがいつも以上に多かった以外は……ゆったりと過ごせる日だったわ。
サフィアから、イツキがお茶会の時に例の料理を披露してくれると連絡があり。
チャヅケ……と言うのが一番気になったが、オニギリもだけどアボカドもあるのかしら??
仕上げを部屋で披露すると言うことで、即席ではあるが簡易的な調理台を執事達に用意させたわ。
「お待たせ致しました、ヘルミーナ様」
イツキがワゴンを押しつつ、色んな道具や材料を持ってきていた。単純な料理に見えて、実は物凄く面倒な料理では……と今更ながら、申し訳なく思ったわ。
なのに、イツキはにこにこしたまま……用意させた調理台の上に持ってきた道具を置き、さっさと調理を始めていく。
オニギリ。
アボカドは薄く切って。
緑の茶は初めて見るが、熱いそれをスープの器に入れた米の上にかけたりして……薬草に使う魔法素材の根かと思うようなものを、黒い布があるような不思議な板で、ゴリゴリと回しながら擦っていたわ。
それを……米の上に乗せて、仕上げにオコノミヤキで知ったカツオブシをたっぷり乗せて……さらに、仕上げにとショーユを垂らす。
アボカドにも、擦ったもの……緑色のペーストを小皿にショーユと一緒に用意していた。
「……これが『ワサビ』なの??」
夢で思い出した、あの独特の香りがたしかにした。
いい香りで、清涼感を伝えてくるような……ただ、夢で思い出した独特の辛さがあるとなると……すぐに手は出せない。
でも、だけど。
カツオブシが揺れる動きを見ると、どうしても美味しそうに見えたわ。
「お茶漬けのお茶が冷めるといけませんので、よかったらそちらから。上の具材……特にワサビをお茶に溶かして食べてみてください」
なので、言われた通りに……スプーンでお行儀が悪いがワサビを茶に溶かすために混ぜていく。緑色の塊が消えたら、ゆっくりと茶の部分と米。ふやけたカツオブシを持ち上げて、口に入れてみた。
途端、すごくではないが……あの辛味が舌を痺れさせた、けど!?
「あら? 物凄くさっぱりしているわ??」
たしかに、辛味はあったのに……一瞬だけで、すぐに鼻から突き抜けていくような?
私が苦手としているマスタードと似ているようで全然違う。嫌な酸っぱさもないし、辛いが幼い頃に驚いたあの辛味が……今となっては、良いものだと思えるくらい。
それだけ、大人になると食の好みが変わったせいかしら??
「よかったです。次は、こちらのアボカド刺身をどうぞ」
「サシミ??」
「お醤油とワサビなどで食べる料理を言います。以前お話しした、生のお魚の方が多いですが」
フォークで、ショーユにワサビを少し溶かして……薄く切っただけのアボカドに軽くつけて口に入れてみる。辛さはこちらにもあったが、アボカドのまろやかさと合わされば……あの鼻を突き抜ける感覚がちょうど良かった。
以前のフリットを塩で食べるのも美味しかったが、これはこれで物凄く美味しいわ!!
チャヅケよりも好みで……あっという間に、お皿にあったアボカドを空にしてしまうほどに。
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