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王女のまかない⑧

第2話『温そうめんパスタとは』①

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 けど、そうめんは嬉しい。

 アイスとかは、ここ最近イツキがレシピを公開してくれたことでちょくちょく口に出来ているから。

 ただ……日本のコンビニとかのようにバリエーション豊富とまではいかない。アイスがあるだけ贅沢だし、シェイクも飲めるように考えてもらったんだから、文句は言えないわ。

 とりあえず、そうめん。

 私、つけつゆも嫌いじゃないけど。若菜だった頃は、ぶっかけでごまだれが好きだったわ……。


「今回は、そうめんでパスタぽくしようと思います」

「……カッペリーニみたいな??」

「いいえ。温パスタ風に」

「この暑い時に!?」


 イツキにしては珍しい提案だわ……。

 けど、美味しくないものを作ってくれるわけではないので、イツキがもう持ってきてあると……簡易キッチンに一緒に行けば、調理台の上にはたしかにそうめんの束があったわ。

 日本のように紙の付箋みたいなもので巻かれていて……知らなければ、これは絶対食材に見えないわ。

 他には、


 多分、オリーブオイル


 ニンニク


 お湯


 卵


 プチトマト


 多分、乾燥バジル


 他には調味料もなく、味の決め手をどうするのかわからなかった。


「ふふ。今日のそうめんは茹で汁をそのまま味付けに使っちゃうんです」

「と言うことは……塩だけ? 辛くない??」

「他の食材に味がつくので、ちょうど良くなると思います」


 作り方は、どうなのか。

 ニンニクはスライスしたら、フライパンに多めに入れたオリーブオイルに入れて……弱火でじっくり火を通して香りを出すようだわ。

 次に……いきなり、そうめんを適量そのまま入れた!?


「焦げない!?」

「焦げても、お湯を入れた後に消えていくので問題ありませんよ?」

「……えー」


 全然想像がつかないわ。

 パスタ風にとは言っていたけど、そうめんのこんな調理法は見たことがなかった。まず、家庭でしか食べない料理だもの。

 イツキは菜箸でそうめんがふにゃんとなるまで炒めたら……そこに、勢いよくお湯を入れた。油と水が混ざるから少しは跳ねたけど、すぐにあぶくは落ち着いて……イツキは菜箸でゆっくりとそうめんを回していく。

 たしかに、焦げていた色が薄まって……ニンニクの香りにお腹が限界を迎えそうだったわ。


「ここにプチトマトを入れて」


 皮が軽く破れる程度まで温めるようで……仕上げに、乾燥バジルと溶き卵を入れる。卵がふわふわになったら、軽くかき混ぜて……スープパスタとかに使う器に盛り付けてくれた。

 イツキって、ここ一年しかこの世界で住んでいなかったけど……修行しているせいか、盛り付けがすごくうまくなっているの。今も、菜箸で器用にそうめんをドレスみたいに盛り付けてくれたわ。


「……美味しそう」


 バジルとニンニクの香りが、お腹を強く刺激してくる。

 プチトマトに赤と、卵の黄色が綺麗な飾りにも見えて……。

 ジェノベーゼとも違うし、ペペロンチーノでもない。

 これは……暑いけど、食べたくなってきたわ。

 せっかくだから、ゆっくり食べたいのでイツキの手伝いもしつつ、さっきまで一緒に話していた私の部屋で食べることになった。
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