王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

王女のまかない⑧

第1話 鈍感な友人

　私の友人は、どうやら思っていた以上に鈍感だったようだわ。


「ぷくくく……！」

「……リュシアーノ様、そこまで笑わなくても」

「だって。イツキが失敗するだなんて珍しいし、それに」


　こちらの世界でのことを知らずとも、恋人もとい婚約者へ無意識に誘い文句を言っちゃうだなんて！！

　しかも、聞いている限り不発に終わったようだ。アーネストとは、私が日本からの転生者だと知られてからはちょっとずつ話すようになった。

　恋には見た目以上に奥手だとはわかったけど、良い人だし、私の婚約者である『麗し』のネルヴィスほどではないが……モテるのはなんとなく理解出来た。

　ネルとは違って、剣の腕前の方で『閃光』って異名がつくくらい強いのもなんとなく。

　それはともかく……アーネスト、頑張れ。超頑張れ！

　今は私が幼過ぎるから手出し出来ないネルよりも、ずっとずっと手が伸ばせる環境なのに……イツキが鈍感過ぎるから、一歩踏み出せない気持ちは私もよくわかるわ。


「……知らなかったとは言え、無神経過ぎました」

「ま、いいじゃない？　アーネストに注意されたにしても……イツキはアーネストとそう言う関係になるのは嫌なの？」

「い、嫌、と言うか。…………経験がないので、よくわからなくて」


　二十代越えても、経験のない女は結構多い時代ではあったけど……イツキくらいのピュアさは貴重よ！

　若菜私は違ったけど……イツキを見ているとなんかこう……庇護欲に駆られるわね？

　アーネストの苦労もしのばれるわ……。


「ま。それについては当人同士の問題だものね？　ところで、イツキ？　何か面白い料理があるって言ってたけど、なに？？」

「…………お腹空いたんですか？」

「正直に言うと！」


　さっきから、ちょっとお腹の虫が我慢出来なかったもの！

　イツキの恋愛相談は、これ以上続けてもルーティンになっちゃうから……申し訳ないけど、自分を優先した。


「……わかりました。実は、そうめんを手に入れたんです」

「……どこから手に入れたの？？」


　そうめんは日本人なら、だいたいはわかるわ。パスタとかよりも、うどんと同じくらい古くからあって馴染みの深い麺。

　お湯があれば、短時間で茹でることが出来て、つゆですぐに食べられる。

　他の食材もだけど、この異世界ってだいたいが日本食材多いのよね？

　前にイツキが作ってくれた味噌ラーメンも、めちゃくちゃ美味しかった。


「生産ギルドが、東方大陸から面白い食材を仕入れたって連絡があったんです」

「……東方大陸。中国並みに色々あるわね？」


　サフィアの恋人（むしろ、もう婚約者）であり、近衛騎士団の第一部長である関西弁丸出しのレクサス=バーミィのお母さんが……出身らしい巨大大陸。

　勉強では少しずつ世界事情を習っているけれど……私達のいるフェブラム大陸を含める西方大陸より段違いに大きいんですって。

　だから、地方の言葉だけれど……関西弁があるのかしら？？