上 下
232 / 782
まかない婦のまかない⑥

第4話『ずんだは偉大』

しおりを挟む


「これよこれ!!」


 リュシアーノ様が目を輝かせている間に、ずんだ餅の方も出来たので試食用をおふたりの前に出した。


「……なるほど。枝豆がお菓子に」


 ネルヴィスさんは作る工程を知っているので、枝豆の状態を見てもあまり嫌悪感はないようだ。


「さ。温くなる前にどうぞ」

「いっただきまーす!」

「では、せっかくなので」


 ストローはないから、グラスに口をつけてくぴっと。

 独特の青臭さは少しあるけど……甘くて、なめらかで手作り感満載なシェイクが出来上がっていた!!

 これに……と、フォークでずんだ餅の方も食べてみれば……甘くて、ちょっとだけ豆の食感はあるけど。甘さに砂糖以外に蜂蜜も入れたから……優しい甘さでほっと出来る。これは大成功だ!!


「美味しいわ、イツキ!!」

「これは……風味は特徴的ですが、甘いだけでなく滑らかな舌触りが癖になりますね?」

「アーネスト達もだけど、お母様もきっと喜ぶわ!!」

「最初は王妃殿下へでしたか?」

「ええ。お母様もちょっと夏バテ気味だったの」


 となれば……と、そこからネルヴィスさんの手配は早かった。

 料理長にも自らお願いに行き、枝豆で出来るお餅もだがシェイクもお城の中と外に広めて、夏バテ対策をしようと頑張ってくださったのだ。

 城下町には、それぞれの生産ギルドを経由して。

 アイスクリームから腹痛や頭痛も起きる注意だけを私が伝えたら、イージアスの特級料理人のひとりである私だからと言う保証付きで各地に伝達された。

 お陰で、イージアスにもだが西方大陸の各地に伝わり……今年の夏バテ対策に大きく貢献することが出来てしまいました……。


「とっても美味しいわ、イツキ」


 当初の目的通り、夏バテ気味だったヘルミーナ様にもお出しした時にはとても喜ばれました。


「お口に合ってなによりです」

「けど、こう言うのも食べ過ぎはいけないのね? 甘くて冷たくて……とても食べやすいのに」

「冷たいものは適度に。冷え性を起こすと、人によっては体調を崩すだけですみませんから」

「わかったわ。……けど、そうね? 陛下も枝豆は大層気に入られたから」

「……あははは」


 ヘルミーナ様が今は飲酒が出来ないため、陛下がこの間晩酌のために厨房に来たのが羨ましいのだろう。

 私の料理は、恐れ多くも王族の皆さんのお口にも合うようなので……私の料理を独り占めしたのが、少し悔しいのかもしれない。

 なら、ノンアルコールカクテルもとい、ミックスジュースでそれっぽく晩酌を勧めるのもアリかな??

 あのシェイカーを使えば、バイト時代の経験があるから作れるし……ちょっと、甘えさせ過ぎかもしれないが。

 実は二個違いだし、どうもヘルミーナ様は放っておけないと思ってしまう。友人と名乗るのは畏れ多いけれど、彼女もまた頼ってくださるのでついつい要望に応えたくなるのだ。

 ちなみに、アーネストさん達はシェイクで見事夏バテから即復活されました……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。 和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。 命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。 さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。 腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。 料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!! おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。 突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。 貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。 意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。 貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!? そんな感じの話です。  のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。 ※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。

アラフォー料理人が始める異世界スローライフ

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。 わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。 それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。 男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。 いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。