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兄のまかない②

第1話 公爵家メンバー

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 魔物の繁殖期に大量発生も落ち着いた夏初め。

 俺は、公爵家のプライベートビーチに……当主である父上と近衛騎士を目指す妹とやって来ていた。近衛騎士は今年も魔物討伐遠征に来ていたらしいから、アイシスには練習も兼ねてだ。

 最も、近衛騎士でも我が愚弟ではなく冒険者出身のレクサス=バーミィの部隊らしいが。あの人材も元SS級冒険者だったワルシュ=エイペック殿の……教え子と言うか後輩だそうだ。

 全部、情報をどこからか入手した我が妹から聞いた話だが。


「……うん。波は穏やか、魔物もあまりいないな?」


 魚、猛獣、貝類などの異常繁殖もとりあえず落ち着いているようだ。

 つい先日、我が愚弟が将来の義妹となるイツキ=エイペックさんと……久しぶりに我が家に来る通達が返って来たかと思えば。

 なんと、我が家で毎年恒例の海遊びに連れて行きたいとあったのだ。であれば、海への視察と銘打って状況確認などをせねばならない。

 俺も父も腕はたつが、アイシスは冒険者登録をしてから討伐に幾度か出た程度。経験を積ませるのにもいい機会だとは思ったが……遠征部隊のお陰で、ほとんど落ち着いてはいた。

 俺や父上はともかく、アイシスは少し物足りなさそうにしていたが。無闇に魔物を殺生するつもりではないだろうが、戦闘出来る楽しみはあったのだろう。

 今は、岸の方でぽけっと座り込んでいた。


「…………暇」


 女もアイシスだけなので、話し相手はともかく……共に遊べないのがつまらないにだろうな?

 俺もだが、父上もアイシスから然程離れずに周囲を視察しているだけだから。


「うん。気性の荒い魔物はだいたい減らされたのだろう。なら、イシュタルトにアイシス」

「「はい?」」

「ここはいっそ……予行演習も兼ねて、釣りと行こうか?」

「「釣り??」」


 歳を召したとは言え、まだ四十後半程度の父上なのに……遠方で隠居しているお祖父様とかに似てきたようだ。そう言えば、お祖父様達にも愚弟に婚約者が出来た事を大層喜び、会いに来たいと言っていたような……。


「ひとつ試したいんだ。亜空間収納に生の食材を入れても、腐敗するのがゆるやかだと。なら、私達が持ち帰ったものをヨルダン達が調理しやすくなるかどうかを」

「……父上、腹が減ったのですか?」

「うん! 一部はここで焼こう!! どうもお腹が空いてね?」


 年相応どころか、まだまだ子供っぽいところはあるようだ。

 とりあえず、アイシスも釣りをしたことはあるので三人で散り散りになり釣り糸を垂らすことにした。


(魚もいいが……魔物だと貝がいるな??)


 どれも海の水で塩味がつくので、ただ焼くだけでも美味い。

 そんな想像をするくらい、どうやら俺も腹が減っていたようだ。
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