王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

部下のまかない

第4話『じゃがいもでスイートポテト』②

(…………良い匂い)


　たくさんの溶かしたバター、少しの牛乳。あと、砂糖も入れたからだけど……素揚げしたようなじゃがいもの匂いじゃない。

　違うのとはわかっているけど……本当に、僕の新しい好物になった『カンラ』のような匂いだった。

　薄黄色の……焼いたお菓子、スイートポテトは焦げ目以外の部分は艶々していて、とても美味しそうに見えた。

　イツキさんの指示で手伝った部分はあっても、僕が関わったお菓子。

　カンラみたいな味が……するかもしれない、と期待が膨らんでいく。


「どうぞ、召し上がってみてください」

「うん」

「はい」


　エリオさんと一緒に食べることになり、出来立てだったから『あちち』と言いながら……息を吹きかけつつ、手に取って口に運んだ。


「「ほふ！？」」


　少し焼いただけなのに、中身はとても熱かった！？

　エリオさんもほふほふと言いながら、でも頑張ってもぐもぐとしていた。

　僕もちょっとずつ感じる……芋のほくほくだけでなく、優しい甘さが舌で感じ取れて、これはカンラかと思うくらいな味も感じたんだ！！


「おいひいです！！」


　バターと牛乳のまろやかさに、コク。

　砂糖の純粋な甘さ。

　焦げた卵の部分はあくまで香ばしくて。

　じゃがいもが甘いだなんて、普通だったらおかしいのに……これは全然違った！！

　カンラと間違えるくらいに美味しいだなんて！！


「うん、美味しい！！　これ……カンラと遜色ないよ！」

「ですよね、エリオさん！！」

「よかったです……」


　イツキさんがほっとされるあたり、僕らが口にするまで自信がなかったかもしれない。

　たしかに、じゃがいもを甘くするだなんて発想は……普通じゃないから。大抵素揚げか、シチューなのは市民でも普通だったしね？


「イツキさん！！　これ、料理長に言って明日のデザートとかにしようよ！！」


　もう一個を食べ終えたエリオさんが、イツキさんの手を握ってぶんぶんと振った。僕もだけど、男の人が気にいるくらいのお菓子ってあんまりないもの。少し前にあった、愛友あいゆう祭さいでのチョコレートの山は隊長達は大変だったからね……。

　僕には、家族以外だと幼馴染みとかが、家に帰った時に一緒に配ってくれた程度だ。

　それよりも！！


「僕も！！　これ毎日食べたいくらいです！！」


　このスイートポテトがしょっちゅう食べられるのなら、大変な鍛錬の稽古も頑張れそうだ！！


「！　ふふ、カンラでもちゃんと作りますね？」

「……イツキさんだと、どっちが美味しいんですか？？」

「そうですね。甘さなどを考慮すると、やはりカンラの方が美味しいですね……」

「う……」


　そう思うと、やっぱりカンラの方も食べたくなってしまう。

　僕はエリオさんと一緒にツバを飲み込み、明日以降カンラがイージアス城に届いたら作らせてほしいと彼女に頼み込んだ。

　そして、約束通りそれを作った時に……実は見た目の体格以外、僕と同い年とわかったエリオさん……ううん、エリオと僕は友達になることが出来た。

　あと、カンラのスイートポテトの味は……イツキさんが言うように、たしかに比べようがないくらい美味しかった！！