165 / 784
令嬢のまかない②
第1話 騎士を目指す者
しおりを挟む
イツキ殿がいらっしゃってから、年も明けて数ヶ月。
アーネストの兄上は仕事が忙しいのか、イツキ殿を独占されたいのか……あれ以降、この屋敷にお連れすることはなかった。
(将来の義姉上になることは決まったのに……)
さすがに、円月の頃にご婚約された報せだけは父上に届いた。あの報せで私もだが母上やティア義姉上がどれだけ喜んだのか……アーネストの兄上は知らないでしょう。
とは言え、私のすべきことは決まっている!!
「はぁああああああ!!」
「なんの!!」
今日も今日とて、アーネストの兄上のように近衛騎士になるために……稽古に励んでいた。
お相手は、長兄のイシュタルト兄上であるが……アーネスト兄上に劣るとは言えど、日夜鍛えていらっしゃるから一撃一撃が重い。
身軽な女である私は、こう言う時に自分の性別が女であることを疎ましく思ってしまう。
「まだまだ!!」
「いいぞ、アイシス! もう少し踏み込んでこい!!」
などと、兄上に誘い込まれるような煽りを受けたが……結局今日も勝てなかった。
しかし、それでも上達しているとのお言葉をいただけたのだ。
「本当ですか! 兄上!!」
「ああ。まだまだ攻撃は軽いが、逆に打ち込むことを重点的に極めれば……相手を惑わせることも出来るだろう」
「ありがとうございます!!」
であれば、父上に許可をいただいて狩りに出るのもいいかもしれない。なかなか許可をいただけなかったが、近衛騎士を目指すとイツキ殿の前で宣言した日から……私は淑女のマナーもきちんと学べば、と言う条件を言い渡され、稽古にも打ち込むことが出来た。
どちらもこなせている今なら、父上からもお許しをいただけるだろう。
そして、稽古が終わってから父上のところへ行くと。
「うーん。イシュタルトがそう言うのであれば」
いささか渋いお顔になられましたが、これまでと違う雰囲気なのは分かった。
「決して、深追いしません!! 退却もきちんと致します!! なので!!」
「……わかった。とりあえず、ギルドに行って仮から正式な冒険者に登録してもらいなさい。私からギルマスには承認証を出そう」
「ありがとうございます!!」
お許しを得られたので、今日のだいたいの予定は終わった。
淑女としてのレッスンなども特にない。
暇になってしまったが、以前だと何かしら稽古か男装の練習をしていたのに……男装については、イツキ殿とお会いしてからあまりしなくなった。
あの方のように、美しく凛々しい女性を見てしまったことで己の男性への憧れなどの考え方が変わってしまったのだ。
「! イツキ殿と言えば」
あのアボカドを使った料理などを振る舞ってくださった。
あれはあまり難しくはなかったが……これまで、稽古やレッスン以外で何かをすることのなかった私でも、出来るだろうか??
料理長のヨルダンに聞いて、少しやらせてもらえないか。
そうと決まれば、ドレスをシャツとズボンに変えてからにしようと自室に向かった。
アーネストの兄上は仕事が忙しいのか、イツキ殿を独占されたいのか……あれ以降、この屋敷にお連れすることはなかった。
(将来の義姉上になることは決まったのに……)
さすがに、円月の頃にご婚約された報せだけは父上に届いた。あの報せで私もだが母上やティア義姉上がどれだけ喜んだのか……アーネストの兄上は知らないでしょう。
とは言え、私のすべきことは決まっている!!
「はぁああああああ!!」
「なんの!!」
今日も今日とて、アーネストの兄上のように近衛騎士になるために……稽古に励んでいた。
お相手は、長兄のイシュタルト兄上であるが……アーネスト兄上に劣るとは言えど、日夜鍛えていらっしゃるから一撃一撃が重い。
身軽な女である私は、こう言う時に自分の性別が女であることを疎ましく思ってしまう。
「まだまだ!!」
「いいぞ、アイシス! もう少し踏み込んでこい!!」
などと、兄上に誘い込まれるような煽りを受けたが……結局今日も勝てなかった。
しかし、それでも上達しているとのお言葉をいただけたのだ。
「本当ですか! 兄上!!」
「ああ。まだまだ攻撃は軽いが、逆に打ち込むことを重点的に極めれば……相手を惑わせることも出来るだろう」
「ありがとうございます!!」
であれば、父上に許可をいただいて狩りに出るのもいいかもしれない。なかなか許可をいただけなかったが、近衛騎士を目指すとイツキ殿の前で宣言した日から……私は淑女のマナーもきちんと学べば、と言う条件を言い渡され、稽古にも打ち込むことが出来た。
どちらもこなせている今なら、父上からもお許しをいただけるだろう。
そして、稽古が終わってから父上のところへ行くと。
「うーん。イシュタルトがそう言うのであれば」
いささか渋いお顔になられましたが、これまでと違う雰囲気なのは分かった。
「決して、深追いしません!! 退却もきちんと致します!! なので!!」
「……わかった。とりあえず、ギルドに行って仮から正式な冒険者に登録してもらいなさい。私からギルマスには承認証を出そう」
「ありがとうございます!!」
お許しを得られたので、今日のだいたいの予定は終わった。
淑女としてのレッスンなども特にない。
暇になってしまったが、以前だと何かしら稽古か男装の練習をしていたのに……男装については、イツキ殿とお会いしてからあまりしなくなった。
あの方のように、美しく凛々しい女性を見てしまったことで己の男性への憧れなどの考え方が変わってしまったのだ。
「! イツキ殿と言えば」
あのアボカドを使った料理などを振る舞ってくださった。
あれはあまり難しくはなかったが……これまで、稽古やレッスン以外で何かをすることのなかった私でも、出来るだろうか??
料理長のヨルダンに聞いて、少しやらせてもらえないか。
そうと決まれば、ドレスをシャツとズボンに変えてからにしようと自室に向かった。
40
お気に入りに追加
5,495
あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。