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隊長のまかない④
第4話 王女の本音
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そんなことを考えていた時……執務室の扉からノックが聞こえてきました。
「ネルー! 私だけど!!」
声の主は、僕が愛してやまないリュシアーノ王女殿下ご本人でした。わざわざ御自らノックをされると言うことは、供人を連れずにおひとりで来られたのでしょう。
とは言え、僕に拒否する理由にはなりません!!
「いらっしゃいませ、リュシアーノ様」
扉を開ければ、今日も素敵に愛らしい僕の婚約者が大きな箱を手に持っていらっしゃいました。
「賑やかだったけど、誰かいるの?」
「アーネスト達以外にイツキが」
「そうなの?」
中に入っていいか聞かれたので、もちろんだと僕は招き入れました。
「あ、リュシアーノ様」
イツキがこちらに気づくと、ふわっと笑みを浮かべた。その微笑みにアーネストの顔が真っ赤になるのは無視しましょう。
「こんにちは。チョコレートの匂いがするけど……何か食べていたの??」
「今、ホットチョコレートと言う飲み物を」
「……ホットチョコレート??」
リュシアーノ様が転生者と言う真実は、僕とイツキ以外知らせていませんからね?
なので、リュシアーノ様は何も知らない子供のフリをされました。
「ネルヴィスさん達から、チョコレートを無駄にしないための対策をお願いされまして……なので、ホットチョコレートと言う飲み物を提案したんです」
「……そう。これ、要らないかしら??」
おおよそ、予想はしていましたが……やはり、リュシアーノ様が手にされているのはチョコレートの箱でしょう。
レディ方には申し訳ありませんが、他所と婚約者とでは事情が違います!!
「そんなことはありません、リュシアーノ様!」
僕は彼女の前にひざまずき、手にされている箱を持つ手に自分の手を重ねました。
「……もらってくれる??」
「もちろんですよ」
ひょっとしたら、イツキと合同で作られたかもしれませんがリュシアーノ様はまだまだ体は幼児ですからね?
そこはどうしても仕方がありません。
「……あんな蕩ける微笑み、凄いわぁ」
「殿下限定だからな……」
外野は無視、無視です!
ホットチョコレートは美味しかったですが、リュシアーノ様のチョコレートも当然味わいたい。
僕は、後の事をアーネスト達に任せて離宮の方へ殿下と一緒にお茶会をすることにしました。
「……不恰好だけど」
箱の中身は、普通のチョコレートではありませんでした。
焼き菓子……ケーキのようにも見えます。しかしながら、とても美味しそう。
メイドらに、切り分けなどをお願いしてから……リュシアーノ様は悩ましげなため息を吐いたのでした。
「ネルもだけど、近衛騎士団は皆人気ね?」
以前とは違い、『ワカナ』の記憶があるリュシアーノ様にとって、今は僕がチョコレートを受け取ることが嫌なのでしょう。
そんな感じに見えました。
「……僕の唯一は貴女様だけですよ?」
「わかっているわ。けど、ライバルが多いもの」
ぷん、と音が聞こえるくらい愛らしく不機嫌になられたリュシアーノ様を見ると。
どうしても、愛しさが込み上げてきて……つい、席を立って彼女の柔らかな金髪に唇を寄せてしまいました。
「ネルー! 私だけど!!」
声の主は、僕が愛してやまないリュシアーノ王女殿下ご本人でした。わざわざ御自らノックをされると言うことは、供人を連れずにおひとりで来られたのでしょう。
とは言え、僕に拒否する理由にはなりません!!
「いらっしゃいませ、リュシアーノ様」
扉を開ければ、今日も素敵に愛らしい僕の婚約者が大きな箱を手に持っていらっしゃいました。
「賑やかだったけど、誰かいるの?」
「アーネスト達以外にイツキが」
「そうなの?」
中に入っていいか聞かれたので、もちろんだと僕は招き入れました。
「あ、リュシアーノ様」
イツキがこちらに気づくと、ふわっと笑みを浮かべた。その微笑みにアーネストの顔が真っ赤になるのは無視しましょう。
「こんにちは。チョコレートの匂いがするけど……何か食べていたの??」
「今、ホットチョコレートと言う飲み物を」
「……ホットチョコレート??」
リュシアーノ様が転生者と言う真実は、僕とイツキ以外知らせていませんからね?
なので、リュシアーノ様は何も知らない子供のフリをされました。
「ネルヴィスさん達から、チョコレートを無駄にしないための対策をお願いされまして……なので、ホットチョコレートと言う飲み物を提案したんです」
「……そう。これ、要らないかしら??」
おおよそ、予想はしていましたが……やはり、リュシアーノ様が手にされているのはチョコレートの箱でしょう。
レディ方には申し訳ありませんが、他所と婚約者とでは事情が違います!!
「そんなことはありません、リュシアーノ様!」
僕は彼女の前にひざまずき、手にされている箱を持つ手に自分の手を重ねました。
「……もらってくれる??」
「もちろんですよ」
ひょっとしたら、イツキと合同で作られたかもしれませんがリュシアーノ様はまだまだ体は幼児ですからね?
そこはどうしても仕方がありません。
「……あんな蕩ける微笑み、凄いわぁ」
「殿下限定だからな……」
外野は無視、無視です!
ホットチョコレートは美味しかったですが、リュシアーノ様のチョコレートも当然味わいたい。
僕は、後の事をアーネスト達に任せて離宮の方へ殿下と一緒にお茶会をすることにしました。
「……不恰好だけど」
箱の中身は、普通のチョコレートではありませんでした。
焼き菓子……ケーキのようにも見えます。しかしながら、とても美味しそう。
メイドらに、切り分けなどをお願いしてから……リュシアーノ様は悩ましげなため息を吐いたのでした。
「ネルもだけど、近衛騎士団は皆人気ね?」
以前とは違い、『ワカナ』の記憶があるリュシアーノ様にとって、今は僕がチョコレートを受け取ることが嫌なのでしょう。
そんな感じに見えました。
「……僕の唯一は貴女様だけですよ?」
「わかっているわ。けど、ライバルが多いもの」
ぷん、と音が聞こえるくらい愛らしく不機嫌になられたリュシアーノ様を見ると。
どうしても、愛しさが込み上げてきて……つい、席を立って彼女の柔らかな金髪に唇を寄せてしまいました。
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