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副料理長のまかない

第3話『ニンニクと焼豚の炒飯』①

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 チャーシューを仕込むのには、その時々の肉質にもよるが……出来るだけ脂身の少ない肉を使う方がいいそうだ。好みによっちゃ、脂身を入れても良いらしいが……オーク肉の場合は入れたり、豚肉では入れなかったり……今回仕込むのは肩肉の部分だから脂は適度に抜けるんだそうだ。そこの見分けは俺もまだ分からん。


「ほらよ」

「はい! お借りします!!」


 豚肉は王族が口にしないわけではないが、ワルシュ料理長が魔物肉を導入してからは減ってきた。それでも美味い肉は美味い肉として、畜産関係は今も続けられている。市井じゃ、魔物肉は討伐の得意な冒険者がいない限り……村とかは無理だ。

 俺は端切れとかをどうにかすることにした。筋は使えねーが、多過ぎる脂身とかは料理に使えるからとイツキが教えてくれたもんで。手間はかかるが、俺はそれを仕込んでいく。

 こう言う脂を……向こうじゃ、ラードと言うらしい。


(これ使うと、まかないがうめーんだよなあ?)


 必要なのは、白い脂だが繊維だった部分もまかないに使えるんだと? コロッケとかに入れれば美味いらしい。以前はメンチカツと言うのを作ってくれたが……美味かった。

 と言っても、イツキが仕込むチャーシューは今日は食えん。肉を漬け込むのに丸一日冷蔵庫に寝かせる必要があんだと。だから、今日使うのは前回の残りだ。

 以前は、東方大陸と繋がりがあるところから仕入れた、チューカ麺っつーのでラーメンと言うのを作ってもらったが……美味かった。


「今日はニンニクとあまりのチャーシューでガッツリな炒飯を作っちゃいますね!!」

「「「「「「ひゃっほぉ!!」」」」」

「おー?」


 料理長は今各食堂に併設されてる、厨房の見回りに行っているが……先にイツキは許可を取ったのだろう。チャーハンで、ガッツリとくれば……中央厨房じゃなくとも大抵の奴らは騒いでも無理ないからな?

 イツキがこの城に来て、最初に振る舞ってくれた俺達の思い出の味。

 それがまた一新してくれるのなら、嬉しくないわけがないからなあ?

 せっかくだもんで、俺はラードを仕込んでからイツキの後ろに回り……作り方を見ることにした。

 大人数仕込むが、イツキにはそこまで腕力がないのでだいたい十人前以下くらいを炒めていった。


「ふふふ~ん」


 鼻歌を歌いながら余裕で作っていくが、なんか……カミさんが家で料理するのと似ててほっこりするんだよなあ?

 リーゾがパラパラと炒められているのを最初に見た時は、俺も大層驚いたが。……イツキの異世界での知識と技術を考えれば普通かもしれない。

 だが、こいつがめちゃくちゃ美味いんだ。


「……すげぇ、ニンニクの匂いだなあ?」

「こう言う料理には豪快にしませんと!」

「だなあ? 悪くねぇ」


 王家の方々にはあんまり出せねぇ料理だが。

 けど、アレルギーっつー体質問題の一件で、フルコースは実質消滅した。ごく普通のコース料理は残ったが、それでも以前のような大量の料理を作ることはなくなったんだ。

 お陰で、俺達の仕事の内容も、城の中の仕組みも色々変わった。全部、この嬢ちゃんの知識と技術のお陰で助かったんだ。


「出来ました!! ニンニクと焼豚の炒飯です!!」


 暴力的なまでに、凄い香りだが。

 仕込みでいくらか空いた胃袋にはたまんねー匂いだった!!
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