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メイドのまかない②

第4話『オムライスおにぎり弁当』

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 亜空間収納から出てきた、お弁当の箱。

 大きめの箱が二段あり、レクサス殿は嬉しそうにまだ蓋を開けていない箱を眺めていらした。


「ひょー! イツキはん豪勢にしてくれたんやろうなあ??」


 私も、正直言って気になった。

 まだ、お菓子しか食べたことがないが、イツキ殿の料理はどれもが美味揃い。その理由のひとつに、先日の式典で広まったがワルシュ料理長と同じ……特級料理人らしく。

 世界でまだ数えられる人数しかいない称号。それをあの人はお持ちだと言う。だから、殿下や陛下方はイツキ殿を信頼され、色々と料理を頼むのだろう。

 レクサス殿がお弁当の箱を開けると……その中身はまるで宝石箱のようだった。


「……綺麗」


 赤、黄、緑、オレンジにピンクに茶色。

 箱の半分は黄色のヴェールみたいなのをまとったオレンジの三角。たしか王女殿下にとイツキ殿が昼餉にと用意された『オムライス』? あれよりは小さいし形も違うが似ている気がした。

 その上には野菜や、魚に……茶色は肉だろうか? 素揚げの肉とは違う……不思議な塊。


「お! オムライスか!?」


 レクサス殿はオムライスを食べたことがあるのか、まるで子供のようにはしゃぎ出した。


「召し上がったことがおありですか?」

「おん。こっちやなくて、オムハヤシ言う料理やったんや」

「美味しかった……のですか?」

「サフィアも気にいると思うで? こっちのはまだ食ったことないけどー」


 しかし、冷めても美味しいと言うことなのだろう。一緒に入っていた、スプーンとフォークを受け取り……私の分のお弁当を膝の上に乗せた。その時、レクサス殿の箱の下から何か紙が出てきた。

 私が近かったので、取ってみるとびっしりと文字が刻まれていたのだ。





【お弁当のメニュー】


 ・オムライスおにぎり(付属のシートに包んで食べてください)

 ・色とりどり茹で野菜(薄く塩味ついています)

 ・塩唐揚げ(コカトリスの肉の揚げ物です)

 ・シャケの南蛮漬け(シャケを揚げて、甘酸っぱい調味料に漬け込んだものです)

 ・皮付きフライドポテト(塩味がついています)





 と言う内容が書かれていた。

 わかりやすく丁寧に……イツキ殿のお気遣いがにじみ出ている添え書きだ。


「……ほとんど知らない料理です」

「けど、どれも美味いはずや。サフィアはイツキはんの料理、ほとんど食ったことないやろ??」

「はい。……ピーチ餅くらいです」

「あれも美味いよなあ?」


 だが、今日はそれを独り占め出来る。どれも美味しそうだが、まずは野菜を口に入れると……トマトはともかく、茹でた野菜は塩加減が程よく時間が経っているのにシャクシャクした食感が楽しい。

 次に、オムライスのオニギリと言うもの。箱の中に蝋を塗った紙が入っていたのでそれを巻いて食べて欲しいと添え書きにはあったが。手が汚れないためかと納得して、しっかり巻いてから口に入れてみた。


「!?」

「うんまぁ!」


 レクサス殿も声を上げるくらい……オニギリがとても美味しかった。ケチャップの味付けが濃く、なのに肉も玉ねぎも入っていて甘味なども感じる。わずかに苦味のある部分もあったが、よく見ると緑色の粒が入っていた。味を確かめるのにもう一度口に入れると、すぐに私の好きなピーマンだとわかる。苦手が多いとされるピーマンだが私は逆にその苦味が好きなのだ。

 イツキ殿にお伝えした覚えはないが、好物だとわかるとどんどん食べ進めてしまう。レクサス殿がいらっしゃるから、がっつきはしなかったが。そして、あっと言う間にひとつ食べ終えてしまった。

 まだ二個あるので食べたかったが、他も食べてみようと思う。

 魚の方を食べてみると、甘酸っぱく、しかしさっぱりしていて半生っぽい野菜との相性が良い。魚には何かまぶして揚げたのか、調味料でひたひたになっても嫌な感じがしないのだ。

 次に、ずっと気になっていた茶色の塊。添え書きによれば塩のカラアゲと言う料理らしいが。


「これ美味いわ。酒欲しくなる!!」


 レクサス殿が言うように、塩だけかと思いきやコクなどが凝縮された肉の揚げ物。物足りなさは感じず、香辛料にいくらか使っているのか噛めば噛むほど、その味を感じる。揚げると固くなるはずの肉なのに、全然違う。ひたすら柔らかいのだ。


「……美味しいです」

「やろ? 副隊長は毎晩のように、イツキはんの料理の試食係やってるから羨ましいわ」

「お邪魔はいけませんよ?」

「わーっとる。けど、自分はイツキはんのダチや」


 きっぱりと言われた時の顔は、楽しそうで私に向ける愛情の表情とは全然違う。おふたりには、私にはない友愛の情で繋がっているのがよくわかった。

 思わず、頬が緩むとレクサス殿が少し目を丸くされてから、私の隣にひょいと座られた。


「レクサス殿?」

「……めっちゃ可愛ええ表情して」


 と言った後に、食事中なのに唇を奪われてしまった。

 口の中が匂うはずなのに、彼は気にせずに私の唇を楽しみ……解放される頃には、私は腰が抜けてしまい、原因であるレクサス殿に支えてもらうことしか出来なかった。
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