89 / 782
ギルドマスターのまかない②
第1話 疲労困憊
しおりを挟む
疲れた……。
ここ最近、ずっとだが疲れまくっている……。
ジェイシリアの生産ギルド。近隣の街にも、流通の注目度が高い城下町として有名だ。それは全然誇ってもいい。
だが、ここ最近……ある出来事があってからは忙しさに追われるばかり。以前なら、定期的に取れた休みもほとんど取れないくらいに……ギルドマスターとしての仕事をこなしてきた。
それがついさっき、やっとひと段落ついたくらいに。
「う~~……疲れたぁ」
誰も居ないので、素の状態で執務用の机に突っ伏す。それくらい疲れたのだ、今くらいいいだろう。
「……ほんと。イツキさんは凄い」
約二週間近く前に、このギルドに身分証明書発行とギルドへのレシピ提供をしてくださった女性。そして、おそらくハインツベルト殿の恋人。
彼女が、このギルド……ジェイシリアの街に持ち込んでくださった料理のレシピの数々。加えて、陛下より彼女が持ち込んだレシピの中でも『モチ』は出産後の女には乳の出にくいだけでなく、胸が腫れる病を引き起こすことがあると。それをちょうど、モチのレシピを買った産後まもない女性に知らせると……乳の出はいいが、痛くなりかけたとあった。
その情報が間に合って良かったと思う。
だが、発行者であるイツキさんがジェイシリアのどこにいるのかどうとかの問い合わせが殺到して……売り上げはいいのだが、そちらの対応に私も職員達も疲弊してしまったくらいだ。
「報酬……届けたいんだけどなあ?」
売り上げの何割かをギルドがもらう以外は、発行者への報酬だ。その金額がこの前の一部以上どころかどんどん膨れ上がっていく。
今は私の亜空間収納に入れているが、容量がそろそろ危険だ。届けたいが、規定で報酬は直接お渡しするのが生産ギルドの決まりだ。
次にいつ、ハインツベルト殿もだがイツキさんがジェイシリアに来る可能性は低い。イツキさんが初めて来た時でもあの押し寄せ状態だったから、驚いたでしょう。
とは言え、通達くらいはしておこうと、先程ハインツベルト殿宛に通達は出した。出したが、来てくださるかはわからない。
ぐぎゅぅるぅううううう
机に突っ伏していると、お腹が盛大に鳴ってしまった。そう言えば、ここ最近まともに食事をしていないことを思い出した。
「……食事、作ってもらわないと」
ギルドマスターの任にいるので、いつもはだいたい作ってもらっている。だが、ここ二週間は全体的に忙しいので……わりかし適当に済ませていた。
だから、ひと通り落ち着いた今は、気が抜けてお腹が鳴ってしまったのだろう。
這うような感じで扉を開け、下の階を覗くと大忙しそうではないが……職員の誰もが手隙でない感じ。これは頼めないと諦めるしか無かった。
くーきゅるるるるる
そして、お腹に虫の音が落ち着かない。ここまで落ち着かないのはいつぶりだろうか?
ギルドマスターの任に就いた以来かな??
「…………自分で作るか」
まったく料理が出来なくないわけではないので、とりあえず。この間イツキさんに使わせた厨房に行く前に、せっかくなのでイツキさんのレシピを参考に作ってみようと執務室に戻る。
刷りだしではない、イツキさんの手書きレシピ。
魔法で複製を作ってから、厨房に向かうことにした。
ここ最近、ずっとだが疲れまくっている……。
ジェイシリアの生産ギルド。近隣の街にも、流通の注目度が高い城下町として有名だ。それは全然誇ってもいい。
だが、ここ最近……ある出来事があってからは忙しさに追われるばかり。以前なら、定期的に取れた休みもほとんど取れないくらいに……ギルドマスターとしての仕事をこなしてきた。
それがついさっき、やっとひと段落ついたくらいに。
「う~~……疲れたぁ」
誰も居ないので、素の状態で執務用の机に突っ伏す。それくらい疲れたのだ、今くらいいいだろう。
「……ほんと。イツキさんは凄い」
約二週間近く前に、このギルドに身分証明書発行とギルドへのレシピ提供をしてくださった女性。そして、おそらくハインツベルト殿の恋人。
彼女が、このギルド……ジェイシリアの街に持ち込んでくださった料理のレシピの数々。加えて、陛下より彼女が持ち込んだレシピの中でも『モチ』は出産後の女には乳の出にくいだけでなく、胸が腫れる病を引き起こすことがあると。それをちょうど、モチのレシピを買った産後まもない女性に知らせると……乳の出はいいが、痛くなりかけたとあった。
その情報が間に合って良かったと思う。
だが、発行者であるイツキさんがジェイシリアのどこにいるのかどうとかの問い合わせが殺到して……売り上げはいいのだが、そちらの対応に私も職員達も疲弊してしまったくらいだ。
「報酬……届けたいんだけどなあ?」
売り上げの何割かをギルドがもらう以外は、発行者への報酬だ。その金額がこの前の一部以上どころかどんどん膨れ上がっていく。
今は私の亜空間収納に入れているが、容量がそろそろ危険だ。届けたいが、規定で報酬は直接お渡しするのが生産ギルドの決まりだ。
次にいつ、ハインツベルト殿もだがイツキさんがジェイシリアに来る可能性は低い。イツキさんが初めて来た時でもあの押し寄せ状態だったから、驚いたでしょう。
とは言え、通達くらいはしておこうと、先程ハインツベルト殿宛に通達は出した。出したが、来てくださるかはわからない。
ぐぎゅぅるぅううううう
机に突っ伏していると、お腹が盛大に鳴ってしまった。そう言えば、ここ最近まともに食事をしていないことを思い出した。
「……食事、作ってもらわないと」
ギルドマスターの任にいるので、いつもはだいたい作ってもらっている。だが、ここ二週間は全体的に忙しいので……わりかし適当に済ませていた。
だから、ひと通り落ち着いた今は、気が抜けてお腹が鳴ってしまったのだろう。
這うような感じで扉を開け、下の階を覗くと大忙しそうではないが……職員の誰もが手隙でない感じ。これは頼めないと諦めるしか無かった。
くーきゅるるるるる
そして、お腹に虫の音が落ち着かない。ここまで落ち着かないのはいつぶりだろうか?
ギルドマスターの任に就いた以来かな??
「…………自分で作るか」
まったく料理が出来なくないわけではないので、とりあえず。この間イツキさんに使わせた厨房に行く前に、せっかくなのでイツキさんのレシピを参考に作ってみようと執務室に戻る。
刷りだしではない、イツキさんの手書きレシピ。
魔法で複製を作ってから、厨房に向かうことにした。
44
お気に入りに追加
5,508
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜
櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。
和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。
命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。
さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。
腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。
料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!!
おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
アラフォー料理人が始める異世界スローライフ
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。
わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。
それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。
男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。
いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。