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メイドのまかない
第1話 王女付き第一メイド
しおりを挟む(……どう言うことなのかしら??)
私は今目の前でひざまずいてくださっている、近衛騎士殿のお気持ちがよくわからなかった。
私は、サフィア=メイディス。
イージアス王国の第一王女であらせられる、リュシアーノ王女殿下付きの第一メイドだ。
殿下がお生まれになられた頃から、メイド見習いとしてイージアス城には詰めていて。仕事は大変だったが不自由のない生活を送っていたつもりではある。
ここ数ヶ月で、イツキ=エイペック殿と関わることで城内の慣習が一部一新した。私も苦手にしていた、王族が召し上がる『フルコース』の食べ残し処理。
それを無くしてくれたきっかけが、イツキ殿だったのだ。感謝しても仕切れないと思っていたある日……それが今日なのだけれど。
今目の前でひざまずいていらっしゃる、近衛騎士団第一部隊隊長のレクサス=バーミィ殿から……何故か、お茶会のお誘いをされたのだ。
私はどうして? と思っても、そのお誘いを断う理由が……なかったので、頷いてしまった。
(だって……だって?!)
近衛騎士団の実質ナンバー3の位置にいらっしゃる団員様なのよ!?
気怠げな雰囲気とか、独特のお国言葉が目立つバーミィ殿ではあるけれど。
私は……その、少なからず、この方に憧れを抱いていた。覚えていらっしゃるかはわからないでしょうけど、私が城内で生活している猫を時々世話していた時に……バーミィ殿が先に居らっしゃって猫をあやしていた。
その時の表情に、成人したての私ですら見惚れてしまったのだ。あれ以来遭遇することはないし、近衛騎士の方と関わるのは隊長でいらっしゃるラインシード様だけ。
あの方と殿下は、つい昨日婚約なさいましたが……殿下ときちんと話し合った上での事は私も知っているので、下手な文句は言わないでおく。
それよりも、今この状況!?
何故、私は憧れの方とお茶会をすることに!?
いきなりいらっしゃった殿下がイツキ殿を連れて行かれ、私は殿下がお呼びになった私よりも先輩のメイドに世話役を頼み、バーミィ殿とのお茶会をすることになりました。
離宮の一室で。
「急にすまんな、サフィア嬢ちゃん」
「……いいえ」
嬢ちゃん……たしかに私は成人したての十六歳だ。この方は二十五歳だったから、私を子供扱いしても仕様がない。ちょっとだけ、寂しい気持ちになったのは無視しよう。
それよりも、この状況はどう言うこと?!
ほとんど面識があるようでなかった私と、お茶会だなんて!! 夢かしら……と思ってしまうわ。バーミィ殿の柔らかい微笑みにもときめいてしまう。
「嬢ちゃんとちょぉ、話したかったんや」
「……私とですか?」
私に話だなんて……と思っていると、メイドの先輩がお茶菓子とお茶を持ってきた。
見たこともない、黄色の綺麗なケーキ。
これはバーミィ殿が何処かで調達したものだろうか??
「あ、この菓子。自分がイツキはんに教わって作ったんや」
「え」
わざわざ……私とお茶会をするのに、作られた??
その事実に、私は思わず大きく口を開いてしまった。
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