王宮まかない料理番は偉大 見習いですが、とっておきのレシピで心もお腹も満たします

王女のまかない⑤

第1話 王女の容姿

　イツキに打ち明けてから少し経った今日。

　あれから、ネルヴィスに会うこともなく私は王女としての日々を過ごしていた。学園入学までまだ二年。やる事は勉学とマナーレッスン。

　これまで、前世の記憶が戻る前と変わりない。けど、気づいたことが出来た。


(マナーレッスンって、ダンスとかもだけど結構体使うのよね！？)


　運動不足だった、若菜前世に比べると確実に運動不足解消出来てるわ！！　まだ子供だからひとりでダンサー担当の先生の動きを真似ていることしか出来ないけど……いい、いい！！

　体型維持とかするのにはもってこいよ！？　以前のフルコースを食べていた頃よりは、最近はイツキ達のお陰でご飯の量は減ったにしても。

　私は今八歳だからって、ちょっとだけぽよぽよだった。恋する乙女とは言い難い年齢でも、そこそこの思春期を迎えている年頃だもの！！

　記憶が戻った今は、特に気にしちゃうわ！！


(……それに顔はいいのよね？　顔は)


　今日のレッスンが終わって、汗だくになったので私は側仕えのメイド達に体を洗われて……ほかほかでベッドで休んでいた。

　そして、サイドチェストから手鏡を取り出して……改めて自分の顔を再確認したわ。


「……悪くないわね？」


　ストレートではないけど、ちょっと猫毛気味の輝かんばかりの金髪。金髪が多いのは王族とか王族の親戚にあるのが、この国だと普通らしい。

　だから、ネルヴィスは王族の親戚だから、金髪なのはおかしくない。

　それ以外の私の容姿は、子供にしては整っている方だと思う。ぷくぷくの白いほっぺに、瞳はブルーアイとかじゃなくて、濃いピンク。お母様が言うには、ローズピンクだそうだ。

　私の『リュシアーノ』って名前の一部は、この瞳の色を古語にしてからお父様が決めたらしい。変ではないけど、不思議な名前だけだとは思ってはいたわ。


「……可愛い寄りよね？」


　キツい顔立ちでないのが良かったわ。

　個人的には金髪にならブルーアイの方がいいかなと思うけど、この組み合わせも悪くないとは思っている。

　ネルヴィスは……私を二年前から女として見てはいたらしいけど、なんで？？


(何がきっかけでそうなったわけ！？)


　六歳の子供を意識する二十歳そこそこの男ってどう言う心境！？　ロリコンに片足突っ込んでいるわよ、ネルヴィス！！


「…………～～～～わかんな～い！！」


　いくら考えてもわかんない。

　ネルヴィスに最近会えていないから……と言うか私があの時に逃げてしまったから、会わないようになったか。

　ネルヴィスの本当の心を聞いてもきっかけとかはほとんど聞けていない。

　私は逃げた後に記憶を蘇らせたから、自分の気持ちをある意味なんとなくでしかわかっていない。


「好き……だとは思うんだけど」


　それはネルヴィスが『麗しの』と言われているくらいのイケメン様だから？

　そんなイケメン様に好きだと言われているから？？

　ただ、そんな理由だけで相手を好きだなんて失礼だと思う。王女だから、基本的に相手は選べれないんだけど……。


「…………中途半端はいけないと思うわ」


　だから、これまでの私を振り返ってもネルヴィスの事は特別に変わりない。

　もし、お父様が仮に許してくださって、ネルヴィスと一緒になることが出来たら。

　私はあの人の奥さんになれるのなら……嬉しくないわけがない。この芽生えたばかりの想いを大切にするためにも。

　唯一、秘密を知ってくれている……イツキの協力を仰ぎたい。サフィアに頼んで、呼んでもらうことにした。