67 / 782
王妃のまかない④
第3話『コカトリスのプリン』①
しおりを挟む
メイドに盛り付けてもらったプリンは……今までにないくらい黄金色に輝いているように見えた。美しく飾り切りされた果物もだけど、プリン自体がまるで宝石のように。
これは何を使って作られたのかわからないくらいに、美し過ぎたわ……。持ってきたメイドも、ちょっと食べたいって顔に出ていたほどだもの。
「こちら、コカトリスの卵を使ったプリンです」
「……コカトリスを?」
十数年前、ワルシュ先輩が魔物の肉や卵が人間の体にはいいことを、英雄級冒険者の実績として受け入れてきたけれど。イツキもその事実を知っているからか、積極的に食材として扱っているらしい。
けど、コカトリスの卵をお菓子にだなんて……王族でなくては味わえない贅沢品だ。危険レベルの高いコカトリスを飼育出来たのも、ここ数年だから……献上品として扱われることが多いせい。いつかは、国民全員が口に出来るようにはしたいと陛下が以前おっしゃってた。
とりあえず、せっかくの逸品を前に食べないわけにはいかない。
スプーンを手に、ゆっくりとプリンをすくう。柔らかさは極上で……ゼリーよりも簡単にすくえる。茶色の部分の香ばしい匂いに加えて、艶々とした濃い黄色の輝き。
まずは、そのままを口に入れた。
「!?」
濃い。
まさしくそのひと言。
甘さももちろんだけれど、滑らかな食感に加えて濃い卵の味が口いっぱいに広がっていくのだから。そこに、香ばしいカラメルが舌を落ち着かせてくれて。生クリームも添えられていたが、むしろ不要と思うくらいにこのプリンの完成度は高かった。
「いかがでしょう?」
「美味しいわ……こんなプリン、食べたことがないくらい」
「コカトリスの卵は黄身の部分が濃厚ですけど、後味がすっきりするんです。なので、料理だけでなくお菓子にも最適なんですよ?」
「それも先輩……料理長が?」
「はい。そうです」
何か含んだ物言い。
しかし、このプリンが美味しいことに変わりがないので、今日は遠慮なく堪能することにしたわ。
ひと匙ひと匙、途中一応生クリームの部分と一緒に食べたが逆にプリンの味を邪魔するだけで。
果物と一緒でも同じだったわ。
「美味し過ぎるけど、生クリームとかが邪魔なくらいの完成度は凄いわね?」
「コカトリスの黄身のせいですね? すみません、せっかくメイドさんが用意してくださったのに」
「それについては心配無用よ? このプリンってリュシア達の分もあるかしら?」
「あ……残りは厨房なので、ちょっと」
「そう。また作れるかしら?」
「別の試作品もあるので、料理長に許可をいただいてからお持ちしますね?」
「他の味??」
これだけでも十分美味しいのに、まだ他の味があるだなんて!?
これは何を使って作られたのかわからないくらいに、美し過ぎたわ……。持ってきたメイドも、ちょっと食べたいって顔に出ていたほどだもの。
「こちら、コカトリスの卵を使ったプリンです」
「……コカトリスを?」
十数年前、ワルシュ先輩が魔物の肉や卵が人間の体にはいいことを、英雄級冒険者の実績として受け入れてきたけれど。イツキもその事実を知っているからか、積極的に食材として扱っているらしい。
けど、コカトリスの卵をお菓子にだなんて……王族でなくては味わえない贅沢品だ。危険レベルの高いコカトリスを飼育出来たのも、ここ数年だから……献上品として扱われることが多いせい。いつかは、国民全員が口に出来るようにはしたいと陛下が以前おっしゃってた。
とりあえず、せっかくの逸品を前に食べないわけにはいかない。
スプーンを手に、ゆっくりとプリンをすくう。柔らかさは極上で……ゼリーよりも簡単にすくえる。茶色の部分の香ばしい匂いに加えて、艶々とした濃い黄色の輝き。
まずは、そのままを口に入れた。
「!?」
濃い。
まさしくそのひと言。
甘さももちろんだけれど、滑らかな食感に加えて濃い卵の味が口いっぱいに広がっていくのだから。そこに、香ばしいカラメルが舌を落ち着かせてくれて。生クリームも添えられていたが、むしろ不要と思うくらいにこのプリンの完成度は高かった。
「いかがでしょう?」
「美味しいわ……こんなプリン、食べたことがないくらい」
「コカトリスの卵は黄身の部分が濃厚ですけど、後味がすっきりするんです。なので、料理だけでなくお菓子にも最適なんですよ?」
「それも先輩……料理長が?」
「はい。そうです」
何か含んだ物言い。
しかし、このプリンが美味しいことに変わりがないので、今日は遠慮なく堪能することにしたわ。
ひと匙ひと匙、途中一応生クリームの部分と一緒に食べたが逆にプリンの味を邪魔するだけで。
果物と一緒でも同じだったわ。
「美味し過ぎるけど、生クリームとかが邪魔なくらいの完成度は凄いわね?」
「コカトリスの黄身のせいですね? すみません、せっかくメイドさんが用意してくださったのに」
「それについては心配無用よ? このプリンってリュシア達の分もあるかしら?」
「あ……残りは厨房なので、ちょっと」
「そう。また作れるかしら?」
「別の試作品もあるので、料理長に許可をいただいてからお持ちしますね?」
「他の味??」
これだけでも十分美味しいのに、まだ他の味があるだなんて!?
34
お気に入りに追加
5,508
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜
櫛田こころ
ファンタジー
料理人の人生を絶たれた。
和食料理人である女性の秋吉宏香(あきよしひろか)は、ひき逃げ事故に遭ったのだ。
命には関わらなかったが、生き甲斐となっていた料理人にとって大事な利き腕の神経が切れてしまい、不随までの重傷を負う。
さすがに勤め先を続けるわけにもいかず、辞めて公園で途方に暮れていると……女神に請われ、異世界転移をすることに。
腕の障害をリセットされたため、新たな料理人としての人生をスタートさせようとした時に、尾が二又に別れた猫が……ジビエに似た魔物を狩っていたところに遭遇。
料理人としての再スタートの機会を得た女性と、猟りの腕前はプロ級の猫又ぽい魔物との飯テロスローライフが始まる!!
おっかなびっくり料理の小料理屋さんの料理を召し上がれ?
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
アラフォー料理人が始める異世界スローライフ
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日突然、異世界転移してしまった料理人のタツマ。
わけもわからないまま、異世界で生活を送り……次第に自分のやりたいこと、したかったことを思い出す。
それは料理を通して皆を笑顔にすること、自分がしてもらったように貧しい子達にお腹いっぱいになって貰うことだった。
男は異世界にて、フェンリルや仲間たちと共に穏やかなに過ごしていく。
いずれ、最強の料理人と呼ばれるその日まで。
幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい
梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。