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王妃のまかない④

第1話 驚愕

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 リュシアが昼を別にしたいと言った日。

 私は久しぶりに陛下とふたりで昼餉を取ることになった。ジェラルドにはいつでもお乳をあげれるように、私に後ろに簡易ベッドは設置されているが……今は静かに眠っている。

 少しずつ食べれるようになった、ワルシュ先輩達が手がける料理は美味しい。養女であるイツキのももちろん美味しいが、さすがはワルシュ先輩と言うべきか。

 ただ、時々はイツキの『たぬきおにぎり』を食べたいと思ってしまうけれど。モチとは違い、あれはたしか私でも食べていいはずだから。


(それにしても……珍しいわね? リュシアが席を別にしたいだなんて??)


 何かあったのかしら?

 母親としては、最近あまり……いいえ、出産より前以上に構ってあげれていないのに……聞き分けがいいのか、泣き言とかも特には言わない。

 それに、今朝はともかく昼餉も夫である陛下の様子がおかしい。リュシアがいないせいか、気落ちしていると言うよりも落ち込んでしまっているのだ。私の知らないところで喧嘩でもしたのかしら??


「陛下……?」


 私が呼ぶと、陛下はハッと顔を上げてくださった。


「……なんだ?」

「それは私の台詞ですわ。ずっとそのように落ち込まれて」

「…………ああ」


 すると、陛下は控えていたメイドや執事バトラー達を何故か下がらせた。

 大抵の話であれば同席させるのに……これはよっぽどのことかもしれないわ。私も一度だけベッドで寝ているジェラルドを見た。


「お話してくださいますの?」

「……実は……ネルについてだ」

「え、ネル?」


 リュシアのことだと思っていたが、まだ続きがあるようだ。


「…………リュシアに、本気で惚れているらしい」

「………………………………え?」


 あの、麗しのと淑女の間で囁かれているネルヴィスが?

 王家と縁戚である大公爵家の次男が??

 近衛騎士団の現隊長が??

 まだ八歳でしかない私達の娘を……??


「信じられないだろうが、昨夜偶然に知ってしまったし。本人の口からも確認を取った」

「え……その、本当に??」

「ああ。……そして、リュシアにも知られた」

「!? リュシアはなんと??」

「…………受け入れられずに、逃げた」

「まあ……?」


 それにしては、今朝は落ち着いていたし……お昼を一緒に食べないのは何故かしら??

 誰かに相談……可能性としてはイツキを呼んだかもしれないわね。

 けど、でも。


(ネルヴィス……あなた、幼女趣味であったの!?)


 あなたは私と同じ歳なのよ?

 私が初めてあの子を産んだ歳から??

 と疑問に思っていると、陛下がまた話し出した。


「リュシアを意識し出したのは二年前からだそうだ」

「二年!?」

「本人も……まあ、否定したい時期はあったそうだ。だが、俺とか君には知らせずにいたらしい」

「それが……何故?」

「イツキに相談したそうだ。俺も、彼女がアーネストに話しているのを厨房で聞いてしまった」

「…………」


 イツキは頼りになる女性とは言え、頼り過ぎではないだろうか?

 とは言っても、私もリュシアの母として……ネルヴィスとは知己以上の間柄ゆえに。

 お八つ時に、イツキを私の部屋に呼ぶことにした。
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